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    学校 モノ・風景

    戦前は「甲・乙・丙・丁」評価…通信簿

    読売新聞教育部 石井正博
    • 同じ教科を複数の観点から評価する現在の通信簿
      同じ教科を複数の観点から評価する現在の通信簿

     学校から帰宅し、おそるおそる差し出した通信簿に目を通した父親は「何だ、これは!」と激怒した。

     埼玉県熊谷市の鈴木三重子さん(81)が、戦時中の国民学校時代の通信簿の思い出を手紙で寄せてくれた。「成績に厳しい父が怖く、どなられるたび走って逃げていた」

     通信簿に詳しい鳥取大の山根俊喜教授(58)によると、通信簿は学校が児童生徒の学習状況などを家庭に伝える連絡手段として1890年前後から普及した。「通知表」「通信せん」などとも呼ばれ、戦前は「甲、乙、丙、丁」の4段階評価、国民学校では「優、良、可」が主流だった。

     兵庫県丹波市の青木義雄さん(74)は、小学1年生当時の「通知簿」のコピーを送ってくれた。「戦後間もないころでざら紙をガリ版で刷っただけ」という評価欄は、「國語こくご」「社会」「算数」「音楽」「図工」「体育」など、ほとんどが「優」の判子で埋まっていた。

     その後、高度成長期にかけて数字の5段階評価などが広く使われるようになる。だが、「数字が並ぶだけでは、学力の具体的な状況が分かりにくい」との批判があり、1970年代以降は各教科を数字で評価するだけでなく、「関心」「意欲」「理解力」といった観点別に、「よくできる」「できる」「もう少し」などの言葉で評価する方式が小学校を中心に広まった。

     2000年代に入ると、小学校の7割は観点別評価だけを行い、中学校では観点別と数字による教科の評価を併せて行う方式が多くなった。名称は「あゆみ」など親しみやすい呼び方が定着した。

     通信簿には教員のコメント欄もあるが、教育調査研究所の小島宏さん(73)は「最近は、欠点でなく良い点や進歩した点を強調する傾向にある」と話す。ただ、手書きは減った。

     東京都千代田区立お茶の水小の清水智子副校長(54)は「以前は、手を洗い机を拭いてから万年筆で慎重に丁寧に書き込んだ」と懐かしむ。今は、パソコンに入力しプリントした紙をファイルにとじる方式。風情は感じられないが、「子供一人ひとりへの思いを込めて書く気持ちは変わらない」そうだ。(石井正博)

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    2015年07月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun