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    学校 モノ・風景

    暗がりに浮かぶ絵に感動…幻灯

    読売新聞教育部 石塚公康

     「夏の夜、小学校の体育館に集まると宮沢賢治の『風の又三郎』の幻灯が始まった。

     教頭先生が台本を読み上げながら場面を切り替え、暗闇に浮かび上がったカラーの絵にわくわくしました」

     埼玉県草加市立歴史民俗資料館の細川昭二館長(62)が、故郷の新潟県で見た幻灯の思い出を語ってくれた。

     ガラス板に描いた絵や写真フィルムに光を当て、レンズを通しスクリーンに大きく映し出す幻灯。映像文化史が専門の大久保遼・東京芸術大特任助手(32)によると、ヨーロッパが発祥の幻灯は、江戸時代は「写し絵」などと呼ばれ、娯楽として人気があった。

     明治期に教育現場での利用が始まり、天文、地理、歴史、修身などの授業で視覚的なイメージを補った。情操教育の題材にもなった。戦後は全国の学校で幅広く活用され、幻灯作品の製作が盛んになる。読売新聞社は1950年代、11月11日を「幻灯の日」に定めて優秀作を表彰した。「テレビがない時代、海外の風景や珍しい動物に触れられた。静止画なので細部の構造までじっくり観察できるのも利点だった」と大久保特任助手。

     60年頃から普及したスライドも幻灯の一種。幻灯機は手動で、ガラス板を差し込んだりフィルムを回転させたりして画像を映したが、ボタン一つで切り替わるスライド映写機が登場した。操作が簡単になり、自分で撮影した写真を授業で使う教師も現れた。

     2000年頃には、パソコンと投影装置(プロジェクター)をつなぎ、スライドを含む様々な映像を大型スクリーンに映せるようになった。東京都の私立和洋九段女子中学・高校は昨年、同時に6画面まで映せる「フューチャールーム」を新設。授業では、教材の写真や図表が投影された画面の隣に、生徒がタブレット端末に書き込んだ意見などもそのまま映し出せる。

     「子どものころ、暗がりの中で幻灯を見た記憶がある。今は、教室の照明を消さなくてもスクリーンは十分見えます」と橋本喜一校長(69)。便利だが、幻灯と同じ感動を味わうのは難しいようだ。(石塚公康)

     「学校 モノ・風景」では学校生活を彩るモノや行事を通し、教室や子どもの暮らしの変遷をたどります。今後「黒板」「机」「保健室」「給食の食器」などを取り上げる予定です。
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    2015年09月01日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun