文字サイズ
    学校、受験など教育に関する掘り下げた記事をタイトルごとに掲載します。
    学校 モノ・風景

    陶磁器使う学校増加…給食の食器

    読売新聞教育部 伊藤甲治郎

     「給食ではアルマイト製の器に先割れスプーンが欠かせなかった」。

     埼玉県北本市の「学校給食歴史館」館長を務める大沢次夫さん(61)が小学校時代の思い出を語った。「アルマイト製の器は熱が伝わりやすく、熱い汁物を入れると手で持てない。先割れスプーンは割れているところから汁がこぼれる。皆、顔を近づけて食べていました」

     明治期に、貧困家庭の児童に学校で昼食を無償提供したのが始まりとされる給食。当初は、自宅で使う家庭の食器を持ち寄っていたという。軽くて運搬や保管に便利なアルマイト製の器は、学校給食が制度化された戦後の1950年前後から普及した。60年代には先割れスプーンの利用も広まった。先端が「W」の形状に割れ、一本でスプーンとフォーク、ナイフの機能を備えていた。

     だが、顔を近づけて食べる姿勢は「犬食い」と批判され、70年前後から、給食の食器の材質や形状は変わっていく。

     器は、熱が伝わりにくく、持って食べられる樹脂製の素材が採用された。すると、今度は、樹脂から溶け出す物質などの安全性が問われ、自治体が一部の樹脂製食器の使用を中止する動きも相次いだ。

     2000年代になると、新素材の樹脂のポリエチレンナフタレート製が登場。メーカーの三信化工(東京)によると、「軽くて丈夫で割れず安全性も高い」として全国に普及した。柄などを描くこともでき、埼玉県上尾市は、市の花「つつじ」のイラストを加えている。

     一方、先割れスプーンは米飯給食の増加などもあって、箸やスプーンに替わった。国の06年の調査では箸を使う公立小中学校は99%。先割れスプーンを備える学校は28%にとどまる。

     最近は、陶磁器の食器を導入する学校も増え、東京都内では、強化磁器の食器を使う学校が多い。学校給食に詳しい淑徳大の田中延子客員教授は「かつては、安くて壊れない食器が重視された。今は、安全性や食育の面から家庭的な雰囲気、手にした時の感触などにも重きを置いて、食器が選ばれる時代になった」と話す。(伊藤甲治郎)

     「学校 モノ・風景」では学校生活を彩るモノや行事を通し、教室や子どもの暮らしの変遷をたどります。今後「体育着」「鉛筆」などを取り上げます。エピソードに氏名、連絡先を添え下記の宛先へお寄せ下さい。
    (氏名、電話番号などを明記し、〒100・8055 読売新聞東京本社教育部へ。ファクス03・3217・9908.メールは kyouiku@yomiuri.com )
    2015年11月10日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun