文字サイズ
    学校、受験など教育に関する掘り下げた記事をタイトルごとに掲載します。
    スクールデイズ

    ダンスと文学結んだ「挑戦状」…ロバート・キャンベルさん

    聞き手・伊藤史彦

    日本文学研究者

    • ロバート・キャンベルさん(若杉和希撮影)
      ロバート・キャンベルさん(若杉和希撮影)

     米国ニューヨークなどで育ち、中学3年の時、家族でサンフランシスコに引っ越しました。市立ローウェル高校では、ダンスや演劇に熱中しました。放課後になると、ディスコやカフェに出入りしたり、公演を見に行って楽屋に顔を出したり。仲間と出会い、切磋琢磨せっさたくまできる場所がサンフランシスコにはたくさんありました。

     思い出深い授業の一つが、3年生の時に履修したフローリ・ルイス先生の「文学」です。当時、先生は40歳代で小説家としても活躍していました。眼鏡をかけた小柄な女性でしたが、規律にはすごく厳しかった。私は最初は反発を覚え、授業をちょくちょくサボっていました。

     事前に課題図書を読み、批評を書いてこないと、討論中心の授業に参加できません。ある日の課題図書はアイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスの「ダブリン市民」。面白く読んだけれど、リポートを用意していなかったので、授業をサボることにしました。

     ところが先生は校内を探し回って私を見つけると、教室まで引っ張ってきて、こう命じたのです。「小説から感じたことを踊りで表現しなさい」。教室には、音楽を流すテープデッキも用意してありました。

     「やられた!」と思いました。同級生の前で、私の土俵の上で、挑戦状を突きつけられたのです。「できない」とは言えません。無我夢中で踊りました。終わると拍手が起き、討論になりました。何を話したかあまり覚えていませんが、不思議な高揚感がありました。

     この出来事をきっかけに、私の中に別々に存在していたダンスへの情熱と文学への興味が結びつきました。自信が生まれ、文学を本格的に学びたいと思いました。大学で日本文学を知り、日本に留学し、研究者になりました。

     高校時代は人生の中で一番、変わることができる時期だと思います。先生は、教室の隅でくすぶっていた私に、生まれ変わるきっかけを与えてくれました。(聞き手・伊藤史彦)

    プロフィル
    ロバート・キャンベル
     1957年、米ニューヨーク生まれ。ハーバード大学大学院博士課程修了。85年に九州大学研究生として来日し、2007年から東京大学教授。大規模公開オンライン講座「コーセラ」で、19世紀日本の視覚文化と文学をテーマにした講義を来年3月に配信予定。

     (2015年10月15日付読売新聞朝刊掲載)

    2015年10月19日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun