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    スクールデイズ

    「芸」に包まれた小学時代…加藤武さん

    聞き手・石塚公康

    俳優

    • 加藤武さん(工藤菜穂撮影)
      加藤武さん(工藤菜穂撮影)

     魚市場で知られる東京・築地で生まれ育ちましたが、きょうだいと同じく銀座の泰明尋常小学校(現・泰明小学校)に入りました。

     思い出に残っているのは1941年、6年生の時の担任だった大貫英一郎先生です。細身で、温厚な人柄でした。歴史に詳しく、頼山陽が書いた「日本外史」を使うなど、授業は面白かったですね。

     先生は歌舞伎も好きだった。私の両親も歌舞伎が大好きで、小さい頃からよく連れて行かれて見ていました。公演は夕方4時頃から夜11時頃まで。私の下校を待っていたら開始に間に合わないので、親が「親類が死んだ」などと適当に書いて、早退届を学校に出すんです。大貫先生は「今度は誰を殺すんだい? 先生のおじさんを分けてあげようか」と笑うだけでした。ほのぼのとした時代でした。

     当然、私は芝居好きになった上、寄席に通って落語を聞き、銀座の日劇(日本劇場)で「エノケン」こと、榎本健一主演の映画をよく見ていました。

     級友にも芸達者が多かったので、ある土曜日の放課後、学校の屋上で、自分たちだけの「演芸会」を開きました。私は落語の「阿弥陀池」を演じたり、歌舞伎役者の声色をまねたりして、結構ウケました。

     12月に太平洋戦争が始まると、バスではなく歩いて集団登校するよう、学校から言われました。「体を鍛えろ」ということです。下級生には子役で歌舞伎に出ていた六代目沢村田之助さんがいた。登校途中に彼から、名だたる役者の話を聞くのが楽しみでした。

     戦争が終わり、大学で演劇に熱中した後、1年間中学校で英語教師をしましたが、芝居への思いを断ち切れず、文学座に入りました。小学生時代に芝居の道へ進む下地を作ってしまったようです。(聞き手・石塚公康)

    プロフィル
    かとう・たけし
     1929年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。文学座代表。舞台のほか、映画やテレビでも活躍。今年2月、第22回読売演劇大賞の芸術栄誉賞と優秀男優賞を受賞。

     (2015年4月23日付読売新聞朝刊掲載)

    2015年04月27日 08時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun