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    スクールデイズ

    入試で挫折 仲間に救われる…さだまさしさん

    聞き手・名倉透浩

    シンガー・ソングライター

    • さだまさしさん(立石紀和撮影)
      さだまさしさん(立石紀和撮影)

     子どもの頃は「バイオリンの天才少年」と期待されていたんですよ。

     母の希望で3歳の頃からバイオリンを始め、小学5、6年の時には、九州地区のコンクールで賞をもらった。それで東京の有名な音楽の先生に呼ばれて、中学1年から東京で一人暮らしをしていました。ところが、音楽科のある都立高校に受験で落ちてしまって。もうやけっぱち。でも進学した国学院高校の仲間に救われました。

     特に2年の時のクラスが良くてね。68人いる大クラスだったけど、安本まもる先生の下、まとまっていた。先生は僕らの暴走しそうなエネルギーを上手にさばいてくれました。僕はムードメーカー。小説を書いてみんなに読ませたり、作曲して歌わせたり――。落語研究会に入って、人を笑わせる技術も磨きました。

     バイオリンについては、「音楽大学に行って続けたい」という思いと、「お金がかかる。今、引き返した方が家は楽じゃないかな」という思いの間で揺れていました。結局、高校3年の夏に父親に「やめたい」と言って、国学院大法学部に進みました。

     70年安保闘争の時代だったので、友達と政治や哲学について、深夜まで語り合いました。友達に負けないよう、本も読んで理論武装しました。世の中の価値観が大きく揺れ動いた時代に、最も多感な高校生だったことは幸せだったと思います。

     安本先生や仲間たちとは、今でもよく集まっています。同級生には、「あの頃となんにも変わっていないな」と言われます。ひとりぼっちだと落ち込んでくるけど、学校に行けば仲間がいるので元気が出るし、生きていける。仕送りも少なくてお金もなく、ご飯が食べられない私に、毎日、弁当を分けてくれた友達もいました。青春時代を支えてくれた仲間への感謝を忘れたことはありません。(聞き手・名倉透浩)

    プロフィル
    さだ・まさし
     1952年、長崎県生まれ。「関白宣言」「北の国から」などヒット曲多数。自身の青春時代を題材にした小説「ちゃんぽん食べたかっ!」を30日に出版、同日からNHK総合でドラマも放映される。7月8日にニューアルバム「風の軌跡」発売。

     (2015年5月28日付読売新聞朝刊掲載)

    2015年06月01日 08時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun