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    スクールデイズ

    恩師の拍手が聞きたくて…高嶋ちさ子さん

    聞き手・広中正則

    バイオリニスト

    • 高嶋ちさ子さん(伊藤紘二撮影)
      高嶋ちさ子さん(伊藤紘二撮影)

     プロのバイオリニストを目指して、私立桐朋女子高校(東京都調布市)の音楽科に通っていた頃は、いろいろな意味で迷い、悩んだ時期でしたね。

     6歳からバイオリンを習っていましたが、中学までは音楽と関係ない私立校でした。ところが高校は全国からすごい実力の持ち主が集まっていて、休み時間や放課後に、校舎のあちこちでバイオリンの練習をするんです。自信がなく、お願いだから私が弾くところを見ないで、と思っていました。

     そんな私を支えてくださったのは、当時30歳代で実技担当の教師だった徳永二男つぎお先生です。NHK交響楽団のコンサートマスターを務めていて、あこがれのバイオリニストでした。

     個人レッスンの授業で、うまく演奏できないと、先生は「聴く時間が無駄だ」と言わんばかりに楽器を磨き始めて、「もういいんじゃない」と追い返される。でも、うまくいくと、「よくできたね」と拍手してくれました。その拍手を聞きたい一心で、毎日何時間も練習を積み重ねた気がします。

     高校3年の時、大学でバイオリンを続けるかどうか、先生に相談したことがありました。すると、「別にどちらでもいいが、やめると決める日までは練習を続けてくれ」と言われたんです。悩んでいる時点で練習しなくなれば、みんなとの差は開くだけだ、と。それほどシビアな世界なのに自分は全力を注いできただろうか、と思い直しました。

     先生からは「聴いた人の心に残って家に持って帰れるような音を出さなきゃいけない」とよく言われ、その後もずっと自分に課してきました。迷いや悩みを抱えながらもバイオリンに打ち込んだあの時代があるから、今の自分があるんだと思います。(聞き手・広中正則)

    プロフィル
    たかしま・ちさこ
     1968年、東京生まれ。桐朋学園大卒。米エール大大学院修了。クラシック音楽を気軽に楽しめるコンサートを年100回近く開いている。デビュー20年を迎え、今月1日に新アルバム「Strings on Fire」を発表した。

     (2015年7月9日付読売新聞朝刊掲載)

    2015年07月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun