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    スクールデイズ

    登山と文学 高み目指す…島田雅彦さん

    聞き手・加藤理佐

    作家

    • 島田雅彦さん(飯島啓太撮影)
      島田雅彦さん(飯島啓太撮影)

     子どもの頃から登山と読書が好きでした。

     山歩きは、自らを省みながら高みを目指すところが、文学に近いと思います。登山と文学に早い時期に出会ったことが、心の核にあります。

     家の周りの多摩丘陵は、宅地開発が盛んで、遺跡がたくさん発掘されました。川崎市の市立小学校に通っていた頃、縄文土器を集めにふらふら野山を歩き回り、やがて登山に熱心になりました。よく丹沢(神奈川県)の山に出かけて、行き帰りの電車で本を読んでいました。歩きながら妄想したことを短い小説のようなものにして、祖父からもらったガリ版で個人詩集を作り、教室で配りました。

     中学生になると、当時の青少年の必需品、ラジカセでラジオドラマを作りました。自分で街の音を録音して効果音にし、音楽も組み合わせて。もちろん、シナリオも自作です。

     漠然と芸術への憧れもあって、捨ててあったギターを改造して楽器も作りました。ニスを塗った角材で弦をひっかく。琵琶みたいな音色でした。即興演奏を録音して曲集を作りました。

     14歳の頃には、筆一本で生きていこうと決めていて、同級生や担任教師からは変人扱いされてましたね。担任に勧められて、当時、制服もなく、校風が自由だった神奈川県立川崎高校に進みました。

     全共闘運動が盛り上がった後で、学園祭の時とか、呼んでもいないのに先輩たちが来て熱く語る。煮え切らない返事をしていたら、ノンポリと決めつけられました。その悔しさが、デビュー作「優しいサヨクのための嬉遊曲きゆうきょく」の原点です。

     以来、三十数年が過ぎましたが、多摩丘陵は今も作品に登場します。登山はほとんどしなくなりましたが、街中で地名に「山」がつくところなんかをふらついて、あれこれ考えてます。人類がほっつき歩くことをやめたら、文化的停滞が起きますよ。(聞き手・加藤理佐)

    プロフィル
    しまだ・まさひこ
     1961年、東京生まれ。東京外国語大在学中の83年、「優しいサヨクのための嬉遊曲」が芥川賞候補作となりデビュー。「彼岸先生」で泉鏡花文学賞。2011年から芥川賞選考委員。9月下旬、講談社から「虚人の星」を出版予定。

     (2015年7月23日付読売新聞朝刊掲載)

    2015年07月27日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun