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    スクールデイズ

    一度離れた故郷 今は愛着…熊谷達也さん

    聞き手・鳥越恭

    作家

    • 熊谷達也さん
      熊谷達也さん

     宮城県北部の登米郡(現・登米市)の実家から、地元の町立小、中、県立高校に通っていました。

     理科好きの少年で、中学時代はアインシュタインの伝記や相対性理論の解説書、SF小説などを読みあさっていました。学校の勉強は嫌いでしたが、理科の成績だけは良かったですね。

     高校では、物理班に所属し、文化祭で「コンピューター占い」ができる装置を作った思い出があります。質問に答えてもらうと回路が作動して、占いの結果が出てくる。珍しかったらしく、人気を集めました。

     ただ、当時は、地元の暮らしが嫌でした。周りは田んぼで、平たい風景ばかり。流行のものも手に入らないし、情報もない。それで、首都圏にキャンパスがある東京電機大の理工学部に進学しました。

     大学卒業後は、埼玉県の公立中学で数学の教師になりました。でも、都会の時間の流れや生活のリズムが合わないと思うようになり、30歳で宮城県に戻って気仙沼市の公立中学に赴任しました。その後、本好きが高じて作家になり、今も宮城県に住み続けています。

     かつては地元からの脱出願望がありましたが、本を書くためにあちこち訪ねてみると、変化がなく、つまらないと思っていた地方に、奥深い別の顔があることを知りました。東北の狩猟民マタギに魅せられ、それをテーマにした小説も書きました。

     東日本大震災の後は、気仙沼で教え子と再会したり、地元の若者の復興活動にかかわったり。震災で失われたものを小説に残していこうと思っています。

     私が描く若者たちは、自分が住む町に愛着を持っています。学校時代、自分の故郷を好きになり切れなかった私も、今振り返ると、好きになりたかった部分がたぶんあったと思うのです。(聞き手・鳥越恭)

    プロフィル
    くまがい・たつや
     1958年、宮城県生まれ。東京電機大卒。公立中教諭などを経て97年、作家デビュー。2004年、東北の狩猟民マタギを描く「 邂逅 かいこう の森」で直木賞、山本周五郎賞を受賞。今年7月、東日本大震災がモデルの「潮の音、空の青、海の詩」(NHK出版)を刊行。

     (2015年8月27日付読売新聞朝刊掲載)

    2015年08月31日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun