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    スクールデイズ

    狭き門を目指す大切さ…天野篤さん

    聞き手・山田睦子

    心臓外科医

    • 三浦邦彦撮影
      三浦邦彦撮影

     埼玉県内の埼玉大学付属中学校から、県立浦和高校に入学しました。クラス全員が入学当初、東大進学を目指すような進学校です。入学式の日、校長先生が「浦高生なら狭き門を目指せ」とあいさつされました。その時は自分も、東大を目指すぞ、と思いました。

     けれど高校に入った安心感でなかなか勉強せず、成績は低迷しました。苦手な古典の授業をよく抜け出して、所属していた写真部の部室に行きました。部室には、学園紛争の時代に先輩が掘ったとされる地下室があって、はしごで降りるとカーペットが敷いてあるんですよ。薄暗い中、仲間とよくマージャンをしました。

     喫茶店でモーニングを食べてわざと遅刻したり、ラジオの深夜放送を聞いて授業中に寝てしまったり。世の中の誘惑の引力に吸い寄せられ、何となく流されるままに時間が過ぎました。

     高校2年生の時、父親が心不全になったこともあり、外科医になろうと決めました。けれど、いざ受験となると、どこも受からない。「やればできる」と思っていたけれど、「やってもできない」になってしまい、結局、3浪して日本大学医学部に行きました。

     入学してみると、医学部の勉強はできたんです。その時になって、高校に入って受験勉強をしっかりやらなかったばっかりに、浪人して3年間も無駄にしたんだと気づき、後悔しました。

     無為な高校時代。消しゴムで消してしまいたいです。でも一方で、そんな高校時代や浪人時代があったからこそ、取り戻すために一生懸命頑張れたのかもしれません。

     入学式で校長先生が言った「狭き門を目指せ」というのは、少しでも難しいことに挑み、高いレベルの結果を出せ、ということだったのだと思います。その心意気で、真剣に医者の仕事に向き合っています。(聞き手・山田睦子)

    プロフィル
    あまの・あつし
     1955年、埼玉県生まれ。順天堂大医学部教授。2012年、天皇陛下の心臓手術を執刀。同大の病院などで週5日、手術を行うほか、副院長として後進の指導にもあたる。「熱く生きる」などの著書がある。

     (2015年11月12日付読売新聞朝刊掲載)

    2015年11月16日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun