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    スクールデイズ

    右往左往の人生 悔いなし…汐見稔幸さん

    聞き手・石井正博

    白梅学園大学学長

    • 繁田統央撮影
      繁田統央撮影

     終戦後の堺市で生まれ育ちました。貧しかったけれど、やりたいことを自由にできる、幸せな子ども時代を過ごしました。

     肩を壊して中学1年で野球部を辞めた後、化学の実験に夢中になりました。友人の家の屋根裏に、ホースでガス、水道を引いて、手作りの棚に薬局で買った薬品を並べて実験室に改造してね。古書店で買った専門書を一緒に見ながら、毎晩実験しました。

     大きな失敗もしましたよ。「アルミニウムにカセイソーダを混ぜると、本当に水素が発生するのか」と実験した時のこと。水素を確認しようとマッチを擦ったところ、「ドカーン!」。大音響とともに、フラスコの破片が飛び散りました。けがはしませんでしたが、隣近所は大騒ぎ。適切な指導者がいれば、もっと専門的に化学を学び、違う人生を歩んでいたかもしれません。指導者に出会えなかったのが残念ですね。

     高校は大阪府立天王寺高校に進学しました。自由な校風でしたが、「大学進学」が前提の高校。生き方を巡る様々な刺激や模索を期待していた僕は、どこか適応できませんでした。6月以降、宿題を含めて勉強を一切しなくなりました。

     辞めようとも思ったのですが、「こんな学校は変えよう」と高校3年で生徒会長になり、先生たちに個人的に話を聞きに回りました。必死で何かを求めていた感じですね。

     大学進学など考えていなかったのですが、「日本のロケット開発の父」と言われた東大の糸川英夫博士のところでロケット工学を学びたい、と決意。浪人して東大に入りました。でも、「やっぱり教育のこと、人間のことを考えたい」と方向転換。教育学に向かいました。

     右往左往の人生なのですが、後悔はしていません。自分のやりたいことを見つけ、それを本気で伸ばせる学校を作りたいです。子どもたちが「生きるって面白い」と感じ、何かを見つけられる学校をね。(聞き手・石井正博)

    プロフィル
    しおみ・としゆき
     1947年、大阪府生まれ。東大名誉教授で、専門は教育学、育児学。人気マンガ「クレヨンしんちゃん」から子育ての知恵を読み解いた「子育てにとても大切な27のヒント」など著書多数。

     (2015年12月3日付読売新聞朝刊掲載)

    2015年12月07日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun