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    子育て・生活・文化

    正月を知らない子どもたち…貧困がもたらす国の損失

    立教大学教授 湯澤直美

    学歴格差が一生付きまとう

     では、さとしさんは、努力が足りなかったのか。日本の社会システムのなかでは、学歴の差が様々な格差に結びつき、社会的な不平等となって個人の人生に影響を及ぼす点を見逃してはならないだろう。

     まず、雇用形態。学歴が低位なほど、非正規雇用の比率は一貫して高い。「平成24年版就業構造基本調査」をもとに若年層(15―34歳)の就業状況などを分析した報告書によると、男性の初職が正社員である割合は、中卒の場合には37.0%であるのに対し、高卒では65.5%、大学卒では79.5%と開きが大きい。女性では、中卒で初職が正社員である割合は12.3%と男性よりも少なく、高卒でも50.5%と男性との格差が大きい[3]。

     当然、正規と非正規では収入に差がつく。同調査によると、若年層の男性の場合、正社員の年収は平均335.9万円であるのに対し、パート・アルバイトでは134.1万円、その他非典型雇用では213.7万円である。女性では、正社員の年収は264.8万円、パート・アルバイトは111.6万円、その他非典型雇用は180.5万円であり、いずれも男性よりも低額である。更に重要なのは、年齢が上昇するにしたがって、収入格差が広がるという点だ。

     また、学歴によって選べる職種や企業規模も違う。「きつい労働」ほど、離職率も高くなる。(図4)は学歴別の離職率をみたものだ。1年以内の離職率は大学卒では13.1%であるのに対し、中卒では44.3%、3年以内の離職率は大学卒では計32.3%であるのに対し、中卒では65%を超える。

    • (図4)平成24年3月新規学校卒業者の離職率 出典:厚生労働省「新規学卒者の離職状況(平成24年3月卒業者の状況)」をもとに作成
      (図4)平成24年3月新規学校卒業者の離職率 出典:厚生労働省「新規学卒者の離職状況(平成24年3月卒業者の状況)」をもとに作成

     いま、一部の民間団体や社会福祉施設では、高卒認定試験によって高卒資格を取得する支援が始まっている。また、厚生労働省では、母子世帯の母親自身が高卒資格を取得できるよう支援する高等学校卒業程度認定試験合格支援事業を創設した。しかし、働きながら、ひとりで勉強するのはたやすいことではない。寄り添い、ともに学ぶサポートが必要だ。

    2016年01月15日 10時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun