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    学校 モノ・風景

    文字の大切さ知る機会…書き初め

    読売新聞教育部 伊藤史彦
    • 手本を載せた50年代の教科書(右)と、手本が折り込まれた現在の教科書(東京都江東区の教科書図書館で)
      手本を載せた50年代の教科書(右)と、手本が折り込まれた現在の教科書(東京都江東区の教科書図書館で)

     「12月になると毎朝、授業前にクラス全員で年明けに行われる書き初め大会の練習をしました。

     『友達に負けたくない』と気合が入りました」。千葉県八街やちまた市の山田良子さん(62)は小学校当時の思い出を振り返る。

     新年に初めて文字を書く「書き初め」は、筆始めや初硯はつすずりなどとも呼ばれ、江戸時代に寺子屋を通じて広まったとされる。

     明治以降の学校教育では、毛筆を学ぶ習字の一環で書き初めが行われてきた。昭和の戦時下では国民の戦意高揚を図る役割も担った。1941年12月の読売新聞は、国民学校の児童が書き初めの練習で「大東亜戦争」と書く様子を伝えている。

     戦後、毛筆よりペンや鉛筆を使って文字の書き方を学ぶことが推奨された。だが「子どもの字が乱れる」との意見もあり、51年改定の学習指導要領で、毛筆は、学校の判断で小学4年生以上に指導できるとされた。書き初めの題材には、「年のはじめ」「初日の光」「ふじの山」などのほか、「平和日本」「独立日本」など当時の時代状況を反映したものが登場した。

     その後、毛筆は、国語の「書写」の一つに位置づけられ、68年改定の学習指導要領から小学3年生以上で必修となり、現在に至る。書き初めは、冬休みの宿題になったり、休み明けに体育館などで腕を競い合わせたりする学校が増えた。

     書道用品メーカー「呉竹」(奈良市)によると、60年前後までは、ほとんどの児童生徒が墨をすずりですって書いていた。同社は58年に習字用の墨汁を発売。当初は「邪道だ」と反発する声が寄せられたが、墨をする時間を省略して指導時間を確保したい学校からの注文が次第に増えていったという。

     88年には、表と裏の面を、墨すり用と墨汁用に分けて使えるセラミック製のすずりを発売した。墨汁用の面は、書き初めに使う太い筆で大きな字を書けるよう、墨汁をためる部分が広くとってある。

     千葉大の樋口咲子教授(書写書道教育)は「書き初めは今も昔も、子どもたちが文字の大切さを理解する機会になっている」と話す。(伊藤史彦)

     「学校 モノ・風景」では学校生活を彩るモノや行事を通し、教室や子どもの暮らしの変遷をたどります。今後「オルガン」「ストーブ」などを取り上げます。エピソードに氏名、連絡先を添え下記の宛先へお寄せ下さい。
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    2016年01月12日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun