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    旅人は外国人ばかり~ニッポンの若者はどこに(上)

    旅行作家 荒木左地男
     外国人観光客に沸く日本の観光業界だが、日本人の若い旅人が減っているという。「深夜特急」に代表される若者のベストセラー旅行記も久しく登場していない。若者の「宿の定番」だったユースホステルが姿を消しつつある一方、かつてのバックパッカーが「ゲストハウス」と呼ばれる新しいタイプの宿を開き、若者を引き付けている。若者の旅への意識が変わりつつあると、旅行作家の荒木さんは指摘する。

    「インバウンド」急増の陰で

     「爆買い」「民泊」……。いま旅行者といえば、日本を訪れる外国人、いわゆる「インバウンド」の話題がメディアをにぎわせている。2015年の訪日外国人は2000万人の大台にあと一歩と迫り、前年を4割も上回る。有名観光地には外国人があふれ、このままでは宿泊施設不足の状態になるのは確実。受け入れる観光業界は対応に大わらわだ。

     その一方で、日本から海外に出て行く旅行者たち(旅行業界では「アウトバウンド」と呼ばれる)の方は、インバウンドほどの勢いがない。出国者数は3年連続で前年を下回り、1600万台。45年ぶりにインバウンドがアウトバウンドを上回るという逆転現象が起きた。

     日本人の海外旅行は、1964年の東京オリンピックが開催された年に渡航自由化が行われて以降、80年代の海外ハネムーンブーム、プラザ合意による円高、90年代の子連れ旅、留学・語学研修ブーム、それに続く世界遺産ブーム、韓流ブームなどに乗って10年ごとに倍々ゲームを続けた。2000年にいったんピークを打つが、SARS(重症急性呼吸器症候群)の影響もあって急減。その後回復して2012年に最高記録1849万人を記録するも、現在まで減少傾向が続いている。

     ここ数年の海外旅行離れは、円安、不況、テロなど、国内外の社会不安が大きな要因になっていることは間違いない。LCC(格安航空会社)の登場で旅行費用が抑えられたり、インターネットの普及で旅行情報が得やすくなったりなど、海外旅行のハードルが低くなったにもかかわらず、旅行者が増えていかないのは、旅行への様々な不安がそれ以上に大きなものであることを表している。

     グローバル化が進み、海外との交流がますます盛んになっていく時代背景を考えれば、もっともっと海外渡航者数が増えていかなければならないところだ。旅行を控えさせるこれらの不安は、当面なかなか解消されそうにない。

    20~30代の海外旅行者は減少

     出国者数で気になるのは、若いひとたちの減少が目立つことだ。

     20代の海外出国者数は,60年代から90年代前半にかけて急激に増えていったが、1996年の約460万人をピークに減少し、2003年には約270万人と、約6割まで減少した。同じ期間に海外出国者全体は約8割に減ったから、20代の減少幅の大きさは目立っている。

     2009年と14年の海外旅行者の年齢階層別構成比率を見ると、20代が17.1%から16%へ、30代が20.2%から18.9%へと減っている。これに対して、40代は18%から20.7%へ、50代は17%から17.2%へと増えている。

    • 日本初のホステリング大会(1951年、山梨県山中湖畔の清渓寮ユースホステル前で。日本ユースホステル協会提供)。複数のユースを泊まりながら旅することをホステリングとよんだ
      日本初のホステリング大会(1951年、山梨県山中湖畔の清渓寮ユースホステル前で。日本ユースホステル協会提供)。複数のユースを泊まりながら旅することをホステリングとよんだ

     若い頃に旅体験を積んだ世代は、年齢を重ねても旅することをやめないといわれる。若者の海外渡航がピークを迎えた1996年に20代から30代だった世代は、いま40代から50代。年齢階層別構成比率が拡大している世代だ。逆に若い頃に旅経験をしない世代は、その後も旅に出なくなると言われている。

     いまの20~30代が、これから40~50代になったとき、旅離れ傾向が続く可能性は高い。そして旅経験が少ない世代が親になったとき、旅離れは子供世代にも引き継がれていきかねないのだ。

     では、なぜ若者は旅に出なくなったのだろうか。日本の旅行ブームを支えた世代と、現代の若者の意識とはどう違うのだろうか。かつて若者たちを旅に誘ったふたつのものの変化に注目したい。そのふたつとは「本」と「宿」。

     若者を熱くさせた「旅行記」と若者が多く利用した宿「ユースホステル」の変化を見ていきたい。

    2016年02月05日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun