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    子育て・生活・文化

    SNSから「SOS」が…ネットいじめ、トラブルなぜ起きる

    教育評論家 武田さち子
     子どもの間のいじめで、パソコンや携帯電話等が使われることはもう珍しくない。一方、いじめを受けた子どもがツイッターやライン上でつぶやいたSOSが“放置”され、自殺という最悪の事態に至ってしまうこともある(※)。インターネット時代、子どもたちはどんな状態でいじめの危険にさらされ、また、どんな落とし穴に陥ってしまうのか。そのプロセスと子どもを守るための対処法などについて、子どものいじめ問題に詳しい教育評論家の武田さち子さんに寄稿してもらった。

    • 手軽で便利、なくてはならない存在のスマホだが…(写真はイメージです)
      手軽で便利、なくてはならない存在のスマホだが…(写真はイメージです)

     ※2013年3月、奈良県橿原市で中1女子が自殺した事件。市教育委員会が設置した第三者調査委員会は報告書で、「『仲間はずし』『嫌なことを言われる』『無視』などが、対面での言葉や行為だけでなく、無料通話アプリ「ライン(LINE)」を使う方法でもされており、相当程度のものであった」として、いじめを認定した。

     同年8月、熊本市の県立高校の寮で暮らす高1女子が自殺した事件。ライン上で同級生から脅迫的な書き込みなどがされていたという。

     14年1月に長崎県新上五島町で中3男子が自殺した事件。町の第三者調査委員会が報告書で「いじめで自殺」と結論付けている。男子はラインで自殺をほのめかしていたが、命を救うことができなかった。

    深刻化するネットいじめ

     私は、ツイッターやラインによるトラブルやいじめで自死に追いつめられた子どもたちの例をいくつか知っています。その中から、なぜ、ラインいじめが多発するのか、子どもたちが死に追いつめられてしまうのか、どうすれば子どもをネットいじめやトラブルから守ることができるのかを、急激に広がりつつあるラインを中心に考えてみたいと思います。ぜひ、親子で読んでみてください。

     文部科学省発表の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によると、14年度の小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数は18万8057件。そのうちパソコンや携帯電話等を使ったいじめは7898件で、いじめの認知件数に占める割合は4.2%でした。この数字は氷山の一角でしかありません。しかも深刻化しています。10代の子どもたちの集団リンチ事件や殺人、いじめが原因とされる自殺の背景にも、ラインでのトラブルやいじめが絡んでいることが少なくありません。

    「よくある愚痴」が「悪口」になってしまった悲劇

     まず、一つのケースをご紹介しましょう。

    <ケース1>

     Aくんは高校の部活で面白くないことがあったので、中学時代の友だちへのメールにSくんの愚痴を書いて送りました。すると友だちは、悪口を書かれたSくんとも友だちだったので、そのメールをSくんに転送してしまいました。

     Sくんはメールを見て怒り、Aくんは謝罪しましたが、許してもらえませんでした。AくんがSくんの悪口を書いたことを知って、他の部員もAくんから離れていきました。部員を通じてクラスでも孤立するようになったAくんは別の友人に相談していましたが、ある日、思い余って、「空に行くから」と死を連想させるようなことを書きました。

     そのメールを受け取った友人は心配して、Sくんをはじめ他の部員にもこのメールを転送しました。大騒ぎしてみんなが捜していると、Aくんは自宅にいることがわかりました。みんなが心配して大騒ぎをしたのに、死んでいなかったと責められたAくんは、約1か月後に本当に自殺してしまいました。

     このケースは携帯メールでのトラブルですが、この後にお話しするラインでも同様のことが起こり得ます。よくある愚痴が悪口になって相手に伝わってしまい、最悪の悲劇を引き起こしてしまったのは、なぜなのでしょうか。 

     

    2016年03月16日 09時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun