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    学校生活

    組み体操事故、「感動」が見落としてきたリスク

    名古屋大学大学院准教授 内田 良
     小、中、高校の運動会の人気種目「組み体操」で、生徒たちが四つんばいになって重なる「ピラミッド」などの演技が年々巨大化しており、骨折などのけがが多発している。一部の教育委員会が禁止方針を打ち出す中、国会議員の超党派議連が先月末、安全対策について馳文科相に申し入れを行った。文科省では3月中に指針を示す予定だが、学校行事での組み体操の危険性について指摘してきた名古屋大学大学院の内田良准教授(教育社会学)に問題の背景を解説してもらう。

    中学で10段、高校で11段ピラミッド…巨大化と低年齢化

    • 学校の運動会で人気がある組み体操の人間ピラミッド。(写真はイメージを加工しています)
      学校の運動会で人気がある組み体操の人間ピラミッド。(写真はイメージを加工しています)

     学校の運動会で披露される「組み体操」について、今年2月に入ってから文部科学省やいくつかの教育委員会が、安全な指導のあり方を模索し始めている。5月に開かれる春の運動会に向けて、いまのうちに行政としての態度を明確にしておこうという流れだ。

     組み体操の中でも「ピラミッド」や、立った人の肩の上に乗る「タワー」が人気だが、これらの種目がどのような意味で問題視されるようになったのか。まずはその巨大さである。筆者が確認したところ、人間ピラミッドの中学校の最高記録は10段に達する。高校では11段である。ここまで巨大な組み体操は、この10年ほどの間に始まったものと考えられる。

     この巨大化の波は小学校にも及んでいて、9段のピラミッドが複数の学校で確認されている。大阪市の調査によると、2014年度に小学校のピラミッドでもっとも多くの学校が取り組んだのは、7段だったという(最高は8段)。いまでは幼稚園の運動会でも組み体操が取り入れられている。15年の秋には、ある幼稚園で6段ピラミッドを組み立て、誇らしげに写真を同園のウェブサイトに公開していた。

    多発する負傷事故…学習指導要領に記載がない種目

     つまり、今日の組み体操は、第一に巨大化(高さや規模が従来よりも大きくなっている)していて、かつ第二にそれが低年齢化(幼稚園や小学校の取り組みとして広がっている)しているということである。

    • 小学校における体育的活動中の負傷事故件数(2014年度)=内田准教授作成
      小学校における体育的活動中の負傷事故件数(2014年度)=内田准教授作成

     この巨大化と低年齢化は、組み体操による事故件数の多さにも影響を与えていると考えられる。小学校における体育と運動会の準備などでの負傷事故件数(部活動を除く)を見てみると、組み体操は、跳び箱とバスケットボールに次いで事故が多い。跳び箱やバスケットボールは、全国の学校で複数の学年にまたがって実施されているのに対して、組み体操は6年生だけが取り組むことが多く、また必ずしも全国で行われているわけでもない。事故率としてみると、かなり高くなると推察される。

     しかも組み体操は、文部科学省が定める学習指導要領には、まったく記載されていない。それにもかかわらず、負傷事故が多発しているということで、喫緊の対応が求められているのである。

    2016年03月23日 12時46分 Copyright © The Yomiuri Shimbun