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    学校、受験など教育に関する掘り下げた記事をタイトルごとに掲載します。
    学校生活

    あこがれのセーラー服は今… 学校制服の系譜と戦略

    イラストレーター 森伸之
     映画「セーラー服と機関銃」の続編が3月、橋本環奈主演で公開された。そう言えば、1980年代に活躍したおニャン子クラブのヒット曲にも「セーラー服を脱がさないで」という歌があったが、イマドキの学校制服はブレザーにチェックのミニスカートが主流になっている。世の男性にとって永遠のあこがれであるセーラー服はもはや過去のものなのか。85年に出版した『東京女子高制服図鑑』がロングセラーになったイラストレーターで制服研究者の森伸之さんに、学校制服の系譜と最新トレンド、学校側の戦略について寄稿してもらった。

     中学受験や高校受験で学校を選ぶとき、なにかと気になるのが「制服」。とりわけ女子生徒にとって制服が魅力的かどうかは、校風や通学時間、トイレの清潔さとともに、重要なチェックポイントになっている。筆者が1985年に出版した『東京女子高制服図鑑』が当初の予想を超えて女子中高生に支持され、10年間にわたるロングセラーとなったのも、当時の彼女たちが制服情報に飢えていたためだろう。

     もちろん今では学校も、その点は心得ている。制服を変更する学校は公式サイトやパンフレットなどでモデルチェンジをアピールするのが普通になっているし、首都圏の受験ガイドには、各校の制服の写真が巻頭カラーで掲載されている。そして、なにか大きな特色を持つ制服が登場すると、新聞やテレビで紹介されることさえある。学校制服はときに「ニュース」になるのだ。

    少女漫画とのコラボレーションが話題の新設校

    • 京都工学院の新制服
      京都工学院の新制服

     この数年、制服でもっとも話題を集めた学校といえば、京都市の市立京都工学院高校だろう。京都市立の洛陽工業高校と伏見工業高校が統合し、この4月に開校した新設校だ。その制服は、生徒たちが実際に袖を通す2年も前から、新聞やテレビでたびたび紹介されてきた。

     京都工学院の制服が話題になった理由は、デザインそのものよりも、デザインが決まった背景によるところが大きい。この制服は、少女漫画に登場する学校制服を基にデザインされているのだ。集英社の漫画雑誌「マーガレット」に連載された『たいへんよくできました。』(佐藤ざくり・作)という作品の中で、主人公が通う高校の制服。そのデザインを、ほぼそのままのかたちで現実のものにしたのが、京都工学院の新制服だ。

     メディアに登場した架空の制服が実際の学校で採用された例は、過去にもあった。たとえば、宮沢りえ主演の学園ドラマ『いつも誰かに恋してるッ』(90年・フジテレビ系)に登場した、山本寛斎デザインの制服。放送終了後に、富山県立富山南高校ほか数校で非常に良く似た制服(デザインも同じく山本寛斎)が採用され、「宮沢りえが着た制服が現実に」と話題になった。もっともこれは、制服メーカーの依頼で山本寛斎が手がけた学校制服のデザイン案が、実際の学校で採用されるよりも一足先にドラマで使われたというのが実情で、学校側も特にドラマとの関連性はアピールしていなかった。

    • (c)森伸之 エンブレム付きブレザーと、タータンチェックのスカートがブームに
      (c)森伸之 エンブレム付きブレザーと、タータンチェックのスカートがブームに

     これに対して京都工学院は、少女漫画とのコラボレーションを明確に打ち出した。同校の公式サイトやパンフレットにも、佐藤ざくり氏描き下ろしの制服イラストを載せている。学校制服のデザインをめぐって、フィクションの世界と現実がここまでリンクしたケースは、非常に珍しい。この制服は、どのような経緯で誕生したのだろうか?

     京都市教育委員会の新工業高校開設準備室によれば、制服の基本デザインが決定したのは、2014年10月。制服メーカー数社によるコンペの結果、選ばれたという。選出の決め手となったのは、やはり「少女漫画とのコラボレーション」という話題性。そこには、まず女子生徒の注目を集める狙いがあったという。

     「統合前のふたつの工業高校はどちらも男子生徒が多数を占め、硬派なイメージが強かった。制服でそのイメージを払拭し、理系に関心を持つ女子生徒に多く入学してもらおうと考えた」(新工業高校開設準備室)

     この時点で、学校はまだ「京都市立新設高校」と呼ばれていた。校名の一般公募を経て「京都工学院」となるのは15年4月。校名が決まるより半年も早く、制服デザインが決まったことになる。コンペの結果を受けて、京都市教育委員会は「制服デザインプロジェクト」を立ち上げ、学校説明会などで生徒や保護者の意見を聞きながら、制服メーカーとともにディテールを詰めていく。

    • 当時は斬新だった品川女子学院のタータンチェックのスカートとエンブレム付きのキャメルブレザー
      当時は斬新だった品川女子学院のタータンチェックのスカートとエンブレム付きのキャメルブレザー

     この頃リリースされたチラシには「京都市立新設高校×マーガレット 夢のコラボレーション」「漫画の主人公が着ている制服が新校の制服に!!」といったコピーとともに、マーガレットの表紙や漫画のページなどが掲載されている。お堅いイメージのある教育委員会にしては、意外なほど「攻めている」印象だ。

     「女子にも人気の新工業高校」を実現する上で、この制服にかける期待の大きさがうかがえる。

     新しい制服によって人気を集め、イメージまで大きく変わった学校は過去にもある。代表的なケースは、83年に制服を変更した、東京都千代田区の嘉悦女子高等学校(現・かえつ有明高等学校)だ。オーソドックスな紺サージの制服から、当時はまだ珍しかったタータンチェックのスカートとエンブレム付きのブレザーに変更したことで注目され、一躍人気校となった。

     東京都品川区の私立品川女子学院も、制服のモデルチェンジをきっかけに大きく変わった学校だ。90年に採用したキャメルのブレザーは、ティーン向け雑誌の人気制服ランキングで上位に定着。茶系の制服は不人気という定説を覆し、都内屈指の人気校に躍り出た。

     その一方で、制服は注目を集めたものの、それが学校の人気に結びつかないケースもあった。というより全体として見れば、制服モデルチェンジが不発に終わるケースのほうが多かったかもしれない。

     

    2016年05月02日 15時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun