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    奨学金で老後破産しないために…5ステップでメンテナンス

    ファイナンシャルプランナー 菅原直子

    【ステップ1】申し込み前:高校3年生の4月まで…借りなければならない金額を具体的に親子で算出

     JASSOの奨学金は貸与型のみで、無利子の第一種と、有利子の第二種がある。

     将来の返還負担を大きくしないために、まずは利息のかからない第一種を選ぶ努力をしよう。申し込み条件のうち、第一種の成績基準に合致するよう、高2の3学期までの内申平均を3.5以上にする。ただし、世帯収入が多いなど、家計基準に合致しなければ第二種を申し込まざるを得ない。

     高校3年生のAさんは、理系の私立大学への進学を希望している。入学金は保護者が用意してくれるが、家計は楽ではないので入学後の学費は頼れない。大学では実習が忙しくてアルバイトの時間は取れそうもなく、学費は奨学金を利用するしかないと考えている。奨学金は、多めに借りておけば何かと安心なので、第二種の最高額12万円コースを選ぶつもりでいる。貸与総額は576万円(=12万円×12か月×4年)で、これに利息がつく。

    • (菅原氏作成)
      (菅原氏作成)

     奨学金の利率は卒業時点で決まる。予約申し込みの段階では実際の返還額はわからない。たとえば12万円コースで利率1%なら、返還年数は20年、返還月額は2万6606円となる。10万円コースでも利率3%なら2万6914円でほぼ同額になる。適用される利率がわからない以上、返還額を増やさないためには、貸与額そのものを少なくしておく方がいい。

    • (菅原氏作成)
      (菅原氏作成)

     Aさんの4年間の学費総額はおよそ550万円。Aさんは保護者にも手伝ってもらい、4年間の収入と支出を書き出してみた。その結果、保護者が用意してくれていた150万円は、入学金だけにとどまらず、1年次の学校納付金全額とほぼ同額であることが分かった。さらに、現在通っている予備校代から月額2万円はそのまま援助してもらえることになり、年間の収入は24万円(2万円×12か月)に。半分は通学費用にするので、学費分としては12万円だ。
     用意できる資金を洗いなおしたことで、借りるべき奨学金の額も見直すことができるようになった。当初、奨学金で用意しなくてはならないのは4年間分の学費と考えていたが、3年間の学費から48万円(=12万円×4年)を差し引いた額でいいことがわかった。つまり、借りるべき金額は約356万円だ。Aさん一家は、これなら12万円を借りなくてもやっていけると判断し、8万円コースを選ぶことにした。当初の12万円コースよりも貸与総額192万円の減額、つまりそれだけ借金を減らせたことになる。

     このように、奨学金はどうしても足りない金額だけを借りるようにしよう。そのためにも、在籍する期間中に家計から出せる金額や本人のアルバイト代等の収入と、学校納付金や通学費などの支出を差し引きしてみることが重要なのだ。

     必要月額と選択できるコースがぴったり一致しない場合、多めのコースを選択すると毎月いくらかは手元に残るはず。これは貯めておいて、翌年の貸与月額を減らしたり、繰り上げ返還をしたりして、つねに貸与総額を減らすようにする意識を持ちたい。

    【ステップ2】貸与開始前:予約申し込み~入学前…早めに合格したら、アルバイトも検討

     AO入試や推薦入試で早めに合格が決まったら、アルバイトも検討してみよう。高校の学業に支障のない範囲で、たとえば土日に4時間ずつ時給1000円で4か月(32日間)間働けば約13万円になる。6時間で5か月(40日間)なら約24万円。収入を増やせば、奨学金の利用額を減らすことができる。

     Aさんは、推薦入試で合格すれば11月からアルバイトをするつもりでいる。予備校もやめるので、前払いした費用のいくらかは戻ってくる。推薦で受からなかった場合は一般受験するので、アルバイトはせず予備校にも通い続ける。

     どの時点で合格するかによって、収支は変わってくる。それらを図表化して、大学入学後に変更可能な貸与額の参考にしよう。

    【ステップ3】受給中:入学~卒業…入学してからチェックしたい「給付型奨学金」

    • 余分に借りた奨学金を小遣いにしてしまうケースも。足をすくわれないように注意(画像はイメージ)
      余分に借りた奨学金を小遣いにしてしまうケースも。足をすくわれないように注意(画像はイメージ)

     奨学金選びは入学時で終わりではない。自分に該当する給付型奨学金があるかどうか、常にチェックすることが重要だ。「あなたは、この給付型に該当していますよ」などと親切に教えてはもらえない。自ら情報を仕入れに大学の学生課などに出向こう。利用できる制度を見つけたら、書類の多さや手続きのわずらわしさに負けず、申請を。奨学金は一度決めたコースを変更することができる。給付された分だけ、貸与型奨学金の額を減らすことが可能になる。

     アルバイトも、学業に支障のない範囲で行おう。理系大学や専修学校専門課程の場合、授業数が多いなどでアルバイトの時間を確保しづらいが、長期休暇だけでも働くことができれば、それだけ収入を得ることができる。

     Aさんは、1年生の時には入学後の忙しさに紛れて給付型奨学金をチェックできなかった。しかし、課外活動で知り合った先輩のアドバイスにより、後期は前期以上に学業に精を出して成績を上げた。2年生に進級直後、年間の授業料の半額を給付される奨学金に申請したところ、該当者に。授業料は90万円なので、給付額は45万円。1か月あたりに換算すると3万7500円で、貸与コースを現在の8万円から5万円に減額可能となる。
     第二種奨学金は、進級時の「継続願」の時しか貸与額の変更ができないと思われがちだが、必要に応じていつでも月額の貸与額を変更できる。Aさんは6月から5万円コースに変更した。Aさんが給付を受けた奨学金は1年ごとの申請だったが、3・4年生でも奨学生になることができ、貸与奨学金は卒業まで月5万円にとどめることができた。

     貸与額が変更できることを知らず、4年間同額を借り続けて借金を膨らませてしまう人もいる。余剰分は子どもが小遣いとして使ってしまった、というパターンも多い。足をすくわれないように注意したい。

     第二種奨学金については、利率算定方式の見直しも重要になる。この利率には2種類あって、奨学金申し込み時に「利率固定方式」「利率見直し方式」のいずれかから選ぶ。しかし、総返済額を左右する利率は卒業(貸与終了)時点で決定するため、申し込み時に自分が返済する際の利率がどうなるかわからないのだ。高校3年生の1学期に予約する場合、4年数か月後に決定する利率を見通すのはプロでも難しい。したがって、利率の決まる直前で見直すことが、少しでも有利な方式を選ぶことにつながる。

     金利は、年率3%が上限となる。2016年3月に貸与終了(卒業)した人の場合、利率は利率固定方式0.59%、利率見直し方式0.10%だ。無担保で借りられるお金の金利としては決して高いものではない。しかし、貸与月額8万円で4年借りた時の利率が0.5%と3%の場合を比較すると、総返還額は約112万の差になる。金利の動向を完全に見通すことはできないが、せめて卒業間際に、その後の市場金利の方向性を確認して、利息が少なくなりそうな方式を選びなおすようにしたい。

     卒業間際に、手元にゆとり資金があるのなら、奨学金の繰り上げ返還を行おう。有利子の第二種に利息がつくのは卒業の翌月から。したがって、在学中に返還した分は利息を支払わないので、返還額を増やさずに済む。

    2016年05月10日 09時28分 Copyright © The Yomiuri Shimbun