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    スクールデイズ

    演劇に夢中 人生の糧に…森まゆみさん

    聞き手・石塚公康

    作家

    • 森まゆみさん(安斎晃撮影)
      森まゆみさん(安斎晃撮影)

     東京都文京区で生まれ育ち、同じ区内にある国立お茶の水女子大学付属中学校・高校で学びました。

     進学校として知られていますが、先生たちは大学受験を意識した指導をするわけでもなく、生徒もガリガリ勉強するタイプの人はあまりいませんでした。

     特に高校は自由な校風で、皆、好きなことに打ち込んでいました。中学時代にシェークスピア劇を見て、「芝居をやってみたいなあ」と思っていた私は、高校で演劇部に入りました。

     卒業生に女優や演出家がいる歴史ある部ですが、当時の部員は7、8人ぐらいでした。顧問の先生はほとんど姿を見せず、私たちは自主的に活動していました。

     しかし、上級生が指導する練習は厳しかった。発声練習や台本の読み合わせなどで、せりふや演技に気持ちがこもっていないと、「そんなんじゃダメ!」と、先輩から声が飛びます。ニコリともしないで指導が続くので怖かったですが、皆、真剣でした。プロの劇団員を招き、歩き方や振り向き方を教えてもらったこともあります。

     演劇部は、秋の文化祭で劇を上演するのが恒例でした。1年生の時は「舞台監督」として、大道具や衣装などを率先して担い、裏方の立場で演劇を学びました。

     2年生では、寺山修司の「犬神」で主役の少年を演じました。公演が近づくと、毎日練習です。せりふを覚えるのはなかなか大変で、全部忘れてしまう夢も見ましたが、舞台で演じ終えて、観客から拍手をもらった時の達成感は、今も覚えています。

     3年生になると、演劇部の活動とは別に、クラス単位で文化祭の劇をやろうと私が呼びかけました。大学受験の勉強はそっちのけで、脚本作りと演出に熱中していました。

     振り返ると、自分に与えられた役柄の立場や気持ちを考え、感情移入して演じることは、その後、もの書きになる上で、いい勉強になったと思います。今でも芝居好きで、文楽や歌舞伎を含め毎月4、5本は見ています。もう一度舞台に立って演じてみたいですね。(聞き手・石塚公康)

    プロフィル
    もり・まゆみ
     1954年、東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。出版社に勤務後、84年から2009年まで地域雑誌「谷中・根津・千駄木」の編集人を務めた。著書に「千駄木の漱石」「『青鞜』の冒険」「女三人のシベリア鉄道」など。

    (2016年5月12日付読売新聞朝刊掲載)

    2016年05月16日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun