文字サイズ
    学校、受験など教育に関する掘り下げた記事をタイトルごとに掲載します。
    学校 モノ・風景

    見学から体験・滞在型へ…修学旅行

    読売新聞教育部 森洋一郎

     「金閣寺など寺社をめぐった。燃えるような鮮やかな紅葉が脳裏に焼き付いた」。さいたま市の秋山和市さん(67)が中学3年の秋、京都などへの修学旅行に参加した思い出をはがきで寄せてくれた。旅館で枕投げが始まると、先生に見つかり「大目玉を食らった」と振り返る。

     札幌市の村中せつ子さん(77)からも、青森県の中学生時代の東京への修学旅行について「皇居や靖国神社で記念写真を撮った」とつづった手紙が届いた。「道を渡ろうとしたら『赤信号だよ』とおまわりさんに怒られた。小さな村で暮らす私たちは、信号など見たこともなかった」

     明治期の1880年代後半、東京の師範学校の学生たちが泊まりがけで千葉県に出かけ、軍隊式訓練のほか生物採集や古跡見学をした。その後、長野、山梨県などで日食観測や富士登山をする宿泊旅行も実施された。

     これらが修学旅行の始まりとされ、旧制中学や女学校に広まった。新谷恭明・西南女学院大学教授(64)(日本教育史)は、「名所や旧跡で見聞を広め、集団で親睦を図るのが良い学びになると考えられた」と話す。

     戦後の1950年代、当時の国鉄が専用列車の運行を始めた。関東の中学生向けは「ひので」、京阪神は「きぼう」など、地域ごとに列車に名前が付けられ、新幹線の利用が広まる70年代前半まで各地で運行された。

     日本修学旅行協会(東京)の竹内秀一理事長(63)は、「今は見学・周遊型が減り、体験・滞在型が多くなった」と説明する。農漁村での暮らし体験や工芸品制作などが人気だという。東京都墨田区で今月8日、蒔絵まきえの体験をした神戸市立高倉中学校3年の石料巧士いしりょうたくと君(14)は、「普段はできない経験。伝統を守り続けてほしい」と話した。

     大勢で寝泊まりできる旅館が減る中、静岡県伊東市では「枕投げ」の全国大会を3年前から開く。大将役に枕が当たらないようチームで守る。今年の大会には子どもから大人まで55チーム425人が参加。市観光課の高橋直己さん(28)は、「修学旅行の思い出を懐かしむ参加者も多い」と話した。(森洋一郎)

     「学校 モノ・風景」では学校生活を彩るモノや行事を通し、教室や子どもの暮らしの変遷をたどります。今後「ドッジボール」「絵日記」などを取り上げます。エピソードに氏名、連絡先を添え下記の宛先へお寄せ下さい。
    (氏名、電話番号などを明記し、〒100・8055 読売新聞東京本社教育部へ。ファクス03・3217・9908.メールは kyouiku@yomiuri.com )
    2016年06月21日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun