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    スクールデイズ

    面白さへの憧れいつも…松重豊さん

    聞き手・森洋一郎

    俳優

    • 松重豊さん(関口寛人撮影)
      松重豊さん(関口寛人撮影)

     小学校時代は、父の仕事の関係で転校を繰り返しました。そのたびに新しいクラスに溶け込むため、皆を笑わせようとしていました。ザ・ドリフターズをまねたコントを披露したり、担任の先生の物まねをしたりと、笑いをとることには非常に熱心な子どもでしたね。

     福岡市の中学校に入学すると、先輩の女子から演劇部に入らないかと誘われました。小学校時代の僕を知っていて向いていると思ったようです。でも部員が女子ばかりだったので断りました。僕は巡業で来た力士に憧れ、相撲取りになりたかったのですが、中学では相撲部がなく柔道部に入りました。福岡市の私立高校に進学後も柔道を続けました。

     高校3年の秋、文化祭の出し物にと友人と一緒に、8ミリカメラで「うさぎとかめ」の歌に合わせたコント風の映画を作りました。思った以上に客が大笑いしてくれました。集客の喜びを感じた僕は、演劇学専攻がある明治大学文学部に進学しました。

     大学生活は演劇一色。同級生らに誘われて芝居を見に行くうちにのめり込みました。当時、日本大学芸術学部に在学していた、脚本家の三谷幸喜さんが旗揚げした劇団の作品に出たこともあります。

     大学を卒業する年、ゼミの先生から「演出家の蜷川幸雄さんが、若い人を集めて演劇の指導をしている」という話を聞きました。

     後に「ニナガワ・スタジオ」と呼ばれた実験的な演劇集団で、僕はさっそくオーディションを受けました。覚えさせられたせりふを全部言わなかったのに、「体がでかいから」という理由で合格しました。ここで3年修業し、小劇場などで活動しました。

     その後、様々な人と共演し、その人の芝居が面白くて「すごいヤツだな」と打ちのめされたこともあります。でも面白ければ評価されるのは当然です。クラスで一目置かれたいと努力した小学生時代も同じでした。僕の礎はこの頃の経験で築かれたと思っています。(聞き手・森洋一郎)

    プロフィル
    まつしげ・ゆたか
     1963年、長崎県生まれ。大学卒業と同時に俳優の活動を始める。2012年、テレビ東京系の連続ドラマ「孤独のグルメ」の井之頭五郎役で人気に。9月から東京など4都府県を回る舞台「家族の基礎~大道寺家の人々~」に出演。

    (2016年8月18日付読売新聞朝刊掲載)

    2016年08月29日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun