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    子育て・生活・文化

    あきらめない!ひきこもり脱出の「方程式」

    ニート・ひきこもりの子を持つ親の会「結」事業責任者兼相談員 蟇田薫
     9月7日、内閣府が5年ぶりに発表したひきこもりに関する実態調査では、学校や仕事に行かず半年以上自宅にひきこもっている15~39歳のひきこもりは全国で推計54万人とされた。前回調査より約15万人減ったものの、長期化などの傾向が指摘されている。 「増加中? 社会人デビュー直前のひきこもり」 「がんばり過ぎるな“ひとり親”…子のひきこもりを防ぐコツ(2)(上)」 「同(下)」 を執筆した「ニート・ひきこもりの子を持つ親の会『結』」(※)相談員の 蟇田 ( ひきた ) 薫さんは「ひきこもりの長期化を防ぐには、今、子どもがどの状態にあるかを見極め、段階を踏んで対処することが大切」という。ニート・ひきこもりのタイプ分けや「問題解決方程式」をもとに、蟇田さんが、30歳前にひきこもりを脱出するヒントを解説する。

     

     ※「ニート・ひきこもりの子を持つ親の会『結』」 東京都立川市の認定NPO法人「育て上げネット」が運営。2009年から、約1000家族の相談を受けてきた。15年秋には「結」メンバーが監修・協力し、上大岡トメさんのマンガで対策をわかりやすく紹介した『子どもがひきこもりになりかけたら』(KADOKAWA)も出版された。

     

    「子どもがひきこもりになりかけたら」…マンガで出版

     

    ポケモンGOで外出する子も…あきらめず、焦らず

    • (写真はイメージです)
      (写真はイメージです)

     この夏に配信が開始され、国内外で大人気となったスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」。最近、ニートやひきこもりの子を持つ親御さんから、「ポケモンGOで遊ぶために、ひきこもっていた子どもが毎日外出している」との連絡もちらほら入ってくるようになりました。ちょっとうれしい話です。

     もちろん、「ポケモンGO」で家の外に出たからといってすぐに親の期待通りに行動するとは限りませんが、そう連絡してきた親御さんに、私たちは、「せっかくの機会ですから、家族で話し合う時間を持ってみては?」と提案しています。

     提案に対する親御さんの反応は、大きく2つに分かれます。

     過去に家族内の話し合いが決裂し、膠着(こうちゃく)状態に陥っていると、「今さら話しても無駄でしょ!」「どうせ、無視されるだけ」「聞いているのか、いないのか……」と否定的で、何もしようとしない傾向があります。「無理」「無駄」と、諦めモードに入ってしまい、前に進もうとしないのです。

     一方、ずっとわが子が動き出すことを待っていた焦りのあまり、「明日にでも正社員の求人に応募するよう本人に伝えたい」と先走ってしまう親御さんもいます。準備ができていないところに無理難題を押し付ければ、子どもはまた動けなくなる可能性もあります。突然、日本の最高峰・富士山を目指すより、まずは近くにある、例えば東京の高尾山に登るための体力作りから始めるイメージが大切です。

     あきらめず、焦らず、徐々に段階を追ってわが子が動くように導くヒントを、「問題解決方程式」の形で今回は紹介したいと思います。

     

    若年無業者に3つのタイプ

     まず、現在のわが子がどんな状況なのか、客観的に考察してみましょう。

     子どもが自立するためには、多くの場合、「働くこと」が大きなカギとなります。内閣府は、若年無業者(学生や有配偶者を除く無収入の若年者)を3つのグループに分類しています。就業を希望し求職活動を行っている「求職型」、就業希望は表明するも求職活動を行っていない「非求職型」、就職希望を表明していない「非希望型」です。このうち、「非求職型」「非希望型」が、いわゆるニート(通学も就業もしておらず職業訓練も受けていない人)にあたるとされます。

     そして、私たち「結」や、「結」が所属する若者就労支援組織の認定NPO法人「育て上げネット」では、「非希望型」から「非求職型」に、さらに「求職型」へと変わっていただき、社会で自立してもらえるようなサポートをしています。それぞれの段階に応じた声掛けやアプローチがあるのです。

     ひきこもり支援の現場から見た、各タイプの特徴を紹介しましょう。

     

    <1>非希望型

     もっともひきこもりの状態が強い状態。「誰も自分のことをわかってくれない」と心が折れて自信をなくしている状態です。自室にひきこもり、就業に関心があったとしても希望が持てません。本人はこれまでの「失敗」を後悔したり悩んだりしている状態です(内省)。家庭内では、「安心できる環境」を作るよう心掛け、強引に外に連れ出すことなどせず、じっと見守ることが大切な時期。声をかけても無視されることもしばしばあります。

     生きる希望を持つことすら難しかったり、病気や障害などが原因で本人や家族の努力だけでは改善できない場合もあります。医師などの専門家の助力が不可欠なケースです。この場合は、必ずしも、非希望型から非求職型への移行がベストとは限りません。

     

    <2>非求職型

     <1>の状態から心の傷も少し癒え、自室からリビングなどに食事などをしに出てくる段階。雑談などを通じ、親子の関係修復の可能性が見えてきます。家事や身のまわりのことを任せてみる(家庭内を社会化する)時期です。ポケモンGOで外出できている場合はこの段階か、次の<3>の段階と思われます。

     ただし、早い段階で焦って「これからどうするの?」と将来のことを質問すると、「わかってる」とぶつぶつ言いながら、いつの間にかリビングから黙っていなくなってしまうこともあります。本人は大概「このままではマズイなぁ」と思っていますが、どうしてよいかわからないのです。そのような時は、本人の話を「遮る」ことなく、何を考えているのか、興味を持って、聞いてみましょう。

     

    <3>求職型

     心の傷もほぼ癒え、外の社会に目が向いてくる頃です。ハローワークに相談に行ったり、求人雑誌を買ったり、求人情報をネットで検索したりと、求職活動を始めます。この段階では、親御さんには社会参加や自立に向け背中を押していただきます。本人がつまずきそうであれば、困っていることを聞き、アドバイスしてほしいと思います。精一杯頑張っている本人に、(ねぎら)いの言葉を掛けることも心がけてもらいます。

     もちろん、就労が最終目標でない場合もあります。ケース・バイ・ケースでお考えください。

     

    • (C)上大岡トメ著、KADOKAWA 「子どもがひきこもりになりかけたら」94ページより
      (C)上大岡トメ著、KADOKAWA 「子どもがひきこもりになりかけたら」94ページより

     

    2016年09月16日 09時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun