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    来日外国人と話す一番簡単な方法

    国立国語研究所教授 野田尚史
     2015年度に日本を訪れた外国人客の数は、前年度比45.6%増の約2135万9000人(日本政府観光局調べ)。20年の東京五輪に向けてさらに増えることが見込まれ、今から「英語や中国語など、外国語の学習を」と考えている人もいるだろう。しかし、「来日する外国人たちとコミュニケーションをするには、ヘタな外国語よりも、わかりやすい日本語の方が通じやすい」と話すのは、国立国語研究所の野田尚史教授だ。野田教授に目からウロコのコミュニケーション術を教えてもらった。

    日本語を学ぶ外国人は400万人

     国際化、グローバル化が急速に進む昨今、私たち日本人の間には「もっと語学力をつけたい。外国語を学びたい」という意識が強くなっています。2020年の東京五輪開催まで4年を切り、電車内などでは外国語教室の広告が目につくようになってきました。

     その一方で、外国人たちの間では「日本語を学びたい」という意欲が高まりつつあるのをご存じでしょうか。

     国際交流基金の12年度調査によると、海外で日本語を学ぶ外国人の数はおよそ400万人。この数字は、東京23区の人口の約半分に当たります。30年ほど前と比べると、その数は約30倍にもなっていると言われます。

     しかもこの数は、今、海外の大学などで本格的に学んでいる人の数だけをまとめたものです。過去に日本語を勉強したことがある人や、テレビ、ラジオ、インターネットなどを通じて独学している人の数も加えたら、その何倍もの人が日本語を学んでいると推測されるのです。

     最近、駅やデパート、スーパーなど、私たちの身の回りでも、上手に日本語を使いこなす外国人を見かけることが多くなったと感じることはありませんか? その背景には、日本語に積極的に取り組むこのような外国人たちの姿勢があるのです。

    分かりやすい日本語とは?

     さて、私には仕事柄、日本語を熱心に勉強している外国人の知り合いが大勢います。その中には、「わかりやすい日本語で話してくれれば、たいていのことは理解できる」という人が少なくありません。

     また、観光目的で来日する人たちの中にも、本格的とは言わないまでも、日本語での基本的な会話やあいさつなどを覚えて来日する人がたくさんいます。片言でも日本語を話せる外国人は意外とたくさんいるのです。

     そのような人たちと上手にコミュニケーションするために必要なこととは何でしょうか?

     私が思うのは、なれない外国語を苦労して使うよりも、まずは「わかりやすい日本語で話す」ということだと思います。それができれば、日本語だけでもかなりの意思疎通が可能になるはずです。

    あいまいな言葉を避け、具体的に

     では、外国人にとっての「わかりやすい日本語」とは、どのようなものでしょうか。

     相手の語学力によって異なるのはもちろんですが、単語のレベルでいえば、「なるべく平易な言葉を使う」ことに加え、「できるだけ具体的な単語を使う」ことが最も大切です。

     たとえば、「再度検討させていただいて、改めてご連絡させていただきます」という日本語について考えてみましょう。

     取引先との電話などで時々耳にする言い回しですが、日本語を少し学んだくらいの外国人にとっては、やや難解な言葉に感じられるでしょう。

     この場合、「再度」を「もう一度」に置き換え、「検討させていただいて」を「考えて」などの平易な言葉に置き換えると分かりやすくなります。

     「改めて」は「来週」などと具体的な言葉にすることで、理解しやすくなります。「ご連絡させていただきます」も、「お電話します」とか「メールを送ります」などと具体的に言ったほうが伝わりやすいでしょう。

     このように、「より具体的に」というのが、外国人と話すときには大切なポイントとなります。

     さらにもう一歩進めて、「考えて」や「お電話します」などの述語の前に、「私たちのほうで(考えて)」「私が(お電話します)」と主語を補えば、いっそうわかりやすくなると思います。

    2016年10月19日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun