文字サイズ
    学校、受験など教育に関する掘り下げた記事をタイトルごとに掲載します。
    学校 モノ・風景

    花形行事 地域の娯楽にも…学芸会

    読売新聞教育部 金来ひろみ

     「太宰治の『走れメロス』で王様の役を演じ、今でもせりふを覚えています。王冠を手作りしたのも懐かしい」

     大阪市の歯科技工士太田久彦さん(58)が小学校の思い出をメールで送ってくれた。学芸会は学校行事の花形。発表する子どもだけでなく、父母らにとっても大きな楽しみだ。

     甲子園大学(兵庫県)の佐々木正昭特任教授(教育学)によると、学芸会は、明治初期に小学校の卒業・修了試験を公開で行ったのが始まりという。就学率を上げる学事奨励の一環で、行政の幹部や保護者らが立ち会い、成績優秀者が作文や習字、理科の実験などを披露した。

     1900年(明治33年)、卒業・修了試験が学力偏重などとの批判を受けて廃止されると、それに代わる行事として学習成果の発表会が始まった。成績優秀者だけでなく、子どもたち全員が参加するようになり、当初は「学芸練習会」「教科練習会」などと呼ばれた。「学芸会」の呼び名が定着したのは明治40年代以降だ。

     学芸会で劇が演じられるようになったのは大正期に入ってから。演劇が芸術として次第に認められたことや自由教育の高まりもあり、全国に広まった。戦時中は学芸会そのものが減ったが、疎開先で子どもたちが劇を披露することもあった。佐々木特任教授は「学芸会は地域の娯楽の一つで、農繁期が終わる頃や年度末に開かれた。運動会と並ぶ2大行事だった」と話す。

     もっとも、昨今は教員にとって学校劇の演技指導はなかなかの難題のようだ。東京都新宿区は7月、劇団四季の俳優らを講師に、教員の演劇指導教室を開催。幼稚園から中学校までの教員約50人が参加し、発声法や体の動かし方などを学んだ。区は「演技の指導経験がない若い教員が増え、教えられるベテラン教員も少ない」と説明する。

     区立早稲田小学校では今月、3年に1度の学芸会がある。演劇指導教室に参加した鶴田美由紀教諭(51)は「児童から脚本にない演技のアイデアを引き出すのに、習ったことが役立った」と喜んでいた。(金来ひろみ)

     「学校 モノ・風景」では学校生活を彩るモノや行事を通し、教室や子どもの暮らしの変遷をたどります。今後「ハーモニカ」「校内マラソン大会」などを取り上げます。エピソードに氏名、連絡先を添え下記の宛先へお寄せ下さい。
    (氏名、電話番号などを明記し、〒100・8055 読売新聞東京本社教育部へ。ファクス03・3217・9908.メールは kyouiku@yomiuri.com )
    2016年11月22日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun