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    学校 モノ・風景

    防犯配慮 校内のみ着用も…名札

    読売新聞教育部 石塚公康
    • 回転式の名札。安全ピンが付いた留め具の中央部をひねると、表裏がひっくり返る
      回転式の名札。安全ピンが付いた留め具の中央部をひねると、表裏がひっくり返る

     「1941年に小学校が国民学校に改組されると、布でできた名札を上着の胸に縫い付けました」。東京都練馬区の元小学校長、中牧修さん(83)が、長野県の山村で過ごした子ども時代について語ってくれた。

     戦時中、学校では戦争に即応した教育が行われた。京都市学校歴史博物館学芸員の和崎光太郎さん(39)は「写真を見てもこの時期に名札を着ける子どもが増える。命令や動員をしやすくし、戦災に遭った時の身元確認に役立てる狙いがあったのではないか」とみる。

     戦後は種類が増えた。学年・学級、名前を書いた紙などをビニールケースに入れ、服に安全ピンで留めるタイプ、長方形のプラスチック板に名前を刻んだもの、丸形、小判形など様々だ。

     「1学年300人など、子どもの多い学校が増え、教員も担任しない子の名前まで覚えきれない。名札は随分役立った」と中牧さんは話す。70年前後、1年生を受け持つたびに、一人ひとりの名札を手書きして名前を覚えた。「児童への愛情が自然と湧いてきた」という。

     公衆電話が普及すると、子どもが必要な時に家へ電話できるよう、名札ケースに10円玉を入れておく保護者もいた。

     ところが、登下校時に誘拐など、犯罪の被害に遭う不安が高まった90年頃、名札の着用を校内だけにしたり、名札そのものを廃止したりする学校が出てきた。他方、「児童の名前が分かったほうが指導しやすい」と、着用を続ける学校もまだ多い。

     こうした中、2006年には登下校時に留め具をクルッと回して裏返し、名前を隠せる名札が登場。製造元の「西敬にしけい」(大阪市)によると、「年間の生産量は約20万個。最近は注文に追いつかない」人気ぶりという。

     千葉県いすみ市は14年、この回転式名札を全市立小学校に導入。今春、市教委の学校教育課長から同市立大原小の校長になった浅野洋通さん(58)は「保護者の要望に応えた。すっかり定着した」と経緯を話す。

     回転式名札に日本語と英語で名前を書いて英語学習に利用する小学校もあり、今後、名前の確認以外にも使い道が広がりそうだ。(石塚公康)

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    2017年04月11日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun