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    スクールデイズ

    仏語からアンコールワットへ…石澤良昭さん

    聞き手・金来ひろみ

    上智大学教授

    • 石澤良昭さん(萩本朋子撮影)
      石澤良昭さん(萩本朋子撮影)

     高校卒業まで、北海道で過ごしました。帯広三条高校時代は英語が得意で、友人とたびたび、憧れていた英語の先生の自宅を訪れました。先生を通して英文学の奥深さに触れ、外国への憧れが一気にふくらみました。

     モーパッサンの小説に感動し、フランス語にも興味を持ちました。「原文でモーパッサンを読みたい」と思い、上京して上智大フランス語学科を目指すことにしました。

     上智大に入学後、神父のポール・リーチ教授に出会いました。先輩で小説家の井上ひさしさんの小説「モッキンポット師の後始末」のモデルにもなった方です。先生からはフランス語の発音を徹底して学び、「フランス文化交流史」という講義で紹介されたカンボジアの遺跡、アンコールワットに興味を持ちました。

     大学3年のある日、先生に「ベトナムの大学で講義をする。ついて来ないか」と誘われました。アンコールワットにも足を延ばすと知り、同行しました。65メートルの高さまで石を積む技術や、それを可能にした当時の社会の仕組みに衝撃を受け、魅了されました。

     大学の卒業式があった日も、カンボジアにいました。リーチ先生が頼み込んで下さり、現地のフランス人研究者の助手として残ることができました。当時、フランスはカンボジア人の遺跡保存官を育成中で、その研修に入れてもらったのです。40人近い研修生の中で、日本人は私だけ。カンボジア人の友人が、大勢できました。

     その後、ポル・ポト政権下で知識人が虐殺され、研究仲間も犠牲になりました。政権崩壊後の1980年、仲間から「助けてほしい」と連絡を受けた時、40人近くいた仲間は3人に減っていました。

     この年、12年ぶりにカンボジアを訪れましたが「遺跡の保存、修復はカンボジア人の手でなされるべきだ」と強く思いました。以来、現地で人材を育成し、遺跡の保存と修復に取り組んでいます。上智大でもカンボジア人留学生を積極的に受け入れていますが、学位取得後に母国で活躍しており、頼もしい限りです。

    プロフィル
    いしざわ・よしあき
     1937年、北海道生まれ。上智大アジア人材養成研究センター所長。2005~11年、同大学長。昨年、「アジアのノーベル賞」と呼ばれるマグサイサイ賞を受賞。カンボジアの世界遺産・アンコールワットの研究や保存修復を長年続け、現地で人材育成に努めたことが評価された。

     (2018年1月18日付読売新聞朝刊掲載)

    2018年01月22日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun