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    スクールデイズ

    のびのび 教室でいたずら…上橋菜穂子さん

    聞き手・中谷和義

    作家

    • 上橋菜穂子さん(岩佐譲撮影)
      上橋菜穂子さん(岩佐譲撮影)

     小学3年生のとき、東京都内から畑や沼の多かった川崎市中原区に引っ越しました。体が弱かった私を、緑豊かな環境で育てたいという親の意向でした。

     新居の隣は草の斜面で、よく段ボールで滑り降りました。忍者が好きで、壊れた竹刀に網戸の糸を張って弓を作り、プラスチックの刀を背中に差して走り回りました。

     夏休みは、母の実家があった長野県の野尻湖で過ごしました。ナウマン象の化石で有名な場所です。小学3、4年生の頃、伯父が縄文土器を手に載せてくれました。

     この土器は何千年も前の人が縄を転がして作ったのに、その人はもういない。そう思うと、生と死の悲しみのようなものがこみ上げてきました。幼い頃から作家になりたかったのですが、考古学者にもあこがれました。

     その後は中高一貫の香蘭女学校(東京都品川区)に進みました。先生たちは生徒が羽目を外しても矯正せず、むしろ「もっとやれ」と伸ばしてくれる校風で、毎日いたずらばかり考えていました。

     教室のドアに黒板消しを挟み、入ってきた人の頭に落とすいたずらがありますね。それを、壁のフックに釣り糸を渡し、ドアを開けると糸に結んだ黒板消しが目の前に飛んでくるよう工夫しました。顔に当たらない距離も考えて。授業終了のベルを録音して実際より3分早く鳴らしたり、教壇の下に隠れて先生の足をつかんだりもしました。

    • 高校2年の英国研修旅行で大好きな作家ルーシー・ボストンさん(左)と記念撮影
      高校2年の英国研修旅行で大好きな作家ルーシー・ボストンさん(左)と記念撮影

     立教大文学部では、2年で文化人類学に出会い、大学院に進みました。豪州の先住民アボリジニを研究して文学博士号を取り、文化人類学者になりました。私は体が小さくておっちょこちょいですが、周りの人が助けてくれました。アボリジニにも「何かを聞くぞ」という姿勢ではなく、「教えてください」という感じで受け入れられました。

     「守り人」シリーズの主要人物チャグムは、旅の中で女用心棒バルサをはじめ、様々な人に助けられます。振り返ると、私はチャグムでした。たくさんのバルサに出会い、導かれてきたのだと思います。

    プロフィル
    うえはし・なほこ
     1962年、東京都生まれ。89年に「精霊の木」で作家デビュー。主な著書に、NHKでドラマ化された「精霊の守り人」や、「獣の奏者」「鹿の王」など。2014年には「児童文学のノーベル賞」と呼ばれる国際アンデルセン賞の作家賞を受賞した。川村学園女子大の特任教授も務めている。

    (2018年3月1日付読売新聞朝刊掲載)

    2018年03月12日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun