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競う教師力

(7) 理科の実験 塾が本腰

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佐藤さん(左)の指導で、手作りの眼鏡をのぞき込み、歓声をあげる小学3年生(福岡市の英進館で)

 理科の実験で科学的思考を高める塾がある。

 「わー、オレンジの結晶」「おい、先生にも見せろ」

 福岡市中央区の学習塾「英進館」天神本館で行われた小学3年の理科の授業。懐中電灯を囲み、手作りの紙製眼鏡をかけた子供たちと、講師の佐藤哲史さん(28)の楽しそうなやり取りが続く。

 ホロスペックス眼鏡と呼ばれる眼鏡は、子供たちが自分で作った。レンズ部分の特殊フィルムに細かいギザギザが刻まれており、光の周囲に雪の結晶のような模様が浮かんで見える。

 小3だけに、それほど難しい説明はない。光の不思議を子供に感じてもらい、科学への関心を持たせることが一番の狙いだ。

 佐藤さんは「あまり、学校の実験では使われていないと思う。子供たちが科学者への道を目指すような実験ができればいいですね」と願う。「もちろん進学塾だから、実験のやりっ放しはだめ」と、授業の最後の小テストで、習熟度のチェックも忘れない。

 佐藤さんは、福岡市を中心に九州各地に塾を展開する英進館で、唯一の実験専門の講師だ。天神本館で小学3〜6年生を相手に、年間80回近くの実験を任されるほか、実験授業のカリキュラム作りにもかかわる。毎月1回、理科講師約40人が集まる研修会で寄せられる様々な意見に耳を傾け、実験のやり方を改良もする。

 昨年9月の研修会では、子供たちが工作する電池残量計「乾電池チェッカー」について、計測値が子供によって異なるという問題点が指摘された。円筒の紙にエナメル線を巻き、電流が流れる時に発生する磁界の強さを小さな磁石の振れで測る仕組みだが、円筒の大きさが子供によってバラバラで、エナメル線の巻き数や長さに差が出たためだった。試行錯誤の末、折り目に沿って紙を曲げていけば同じ大きさとなる三角柱型が採用された。

 塾が新たに実験授業を始めたり、増やしたりする傾向は強い。英進館の理科実験は1987年までさかのぼるが、今では全29校のうち22校に理科実験室があり、今年は小1から小6まで約1800人が受講する。希望者のみの受講だったのを、今年度から小学3年は全員受講とした。

 いずれは全学年で全員受講とする考えだ。難関中学の入試は、教科書の知識だけでは対応できない問題が増えており、「問題にどんな規則性が隠されているか見抜かなければならない。それには、日ごろから、五感を使ったトレーニングが必要」と中村淳二教務部長(59)は強調する。

 だが、実験は準備が大変で、コストもかかる。英進館では、佐藤さんのほかにも、実験の教材を作製したり、授業を補助する専門スタッフが6、7人いる。「設備費に人件費、手間。もうけだけを考えたら、できない」と中村部長は明かす。

 完全週5日制で実験の時間が減ったと言われる公立校の理科教師は、塾で実験をする子供たちを、どんな思いで見つめているのだろうか。(西村康英)

 理数大好きモデル地域事業 科学技術・理科教育を推進する文部科学省の事業として、2003年度から「理科大好きスクール」の名でスタート、今年度から衣替えした。全国15地域で、地域の科学館や博物館、大学や研究機関、企業などと連携。観察・実験を重視し、知的好奇心や探求心を高める授業の在り方や教材の研究、小学校での専科教員による理科や算数の授業などにも取り組んでいる。

2005年12月21日  読売新聞)
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