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伸ばす科学の力

(2) 鉄人が競う実験ショー

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審査員の子供たちの前で、理科教師らが実験ショーの技を競い合った「科学の鉄人2006」

 科学実験の腕前を競うコンテストがある。

 会場は満席。立ち見客もあふれて、すべての視線が舞台上に集まる。

 2月11、12の2日間、東京都千代田区の科学技術館で開かれた「科学の鉄人2006」。20〜30分間の実験ショーで、いかに子供たちを引き付け、科学の原理を理解させるかを競い合うコンテストだ。

 初日の予選は、9人の応募者の中から予備選考を通過した5人が舞台に立ち、投票数の多かった2人が決勝に勝ち進んだ。決勝戦では、その2人と前回大会の優勝者、さらに米国の専門家の計4人が得意の実験ショーを披露し、大人と子供合わせて約50人の審査員の評価を待った。

 予選を勝ち抜いた福井県三国町立三国中の理科教師、月僧(げっそう)秀弥さん(37)のショーは「音」がテーマ。長さの違う金属棒をコンクリートの上に順番に落とすことで、「キラキラ星」のメロディーを奏でてみせた。もう1人は神奈川県三浦市教育委員会指導主事の益田孝彦さん(46)。テーマは「空気圧」で、ちょっとした仕掛けでボウリングの球が浮き上がると、会場からは歓声が上がった。

 2人の挑戦を受けて立つのが、昨年の優勝者、北海道立理科教育センター研究員の境智洋さん(40)。数種類の石を子供たちに配り、それをたたいたり、削ったり、こすり合わせたりさせながら、石の種類の違いを分かりやすく解説した。

 米国から招かれた科学実験の専門家、イラン・チャバイ博士(62)は、ドライアイスの上でシャボン玉を浮かせたり凍らせたりして、ショーを進行。審査の結果、前回優勝者の境さんが2年連続のチャンピオンに決まった。

 このコンテストの原形は、料理人が腕前を競う人気テレビ番組「料理の鉄人」だ。「アイアン・シェフ(鉄の料理人)」という題名で、米国でも放映され、これに注目したサンフランシスコの科学博物館エクスプロラトリアムが「アイアン・サイエンス・ティーチャー(鉄の理科教師)」というイベントを考案した。

 「今回のイベントは、その取り組みを参考にしました」。こう語るのは、日本版「科学の鉄人」の仕掛け人、国立天文台の縣(あがた)秀彦・助教授(44)。高校の地学の教員だった縣さんは、子供たちの理科離れに危機感を感じ、以前から科学全般の普及活動を続けてきた。

 「子供たちに科学を身近に感じてもらうためにはどうしたらいいか。出演者も観客も、ショーや子供たちの反応を見ながら学べるのが、このコンテストの特徴です」

 コンテストは2002年に初開催。04年からは毎年開いているが、まだ知名度が低く、出演希望者が少ないのが縣さんらの悩みだ。

 ただ、予選で落ちた人も「ここに来ただけで刺激になった」と語った。こうした声を背に、縣さんらは来年以降もコンテストを続ける。理科離れを心配するだけでは事態は何も変わらないからだ。(中島達雄)

 科学実験ショー 子供たちに科学に親しんでもらう手法のひとつで、見て楽しい実験や、子供自身が参加できる実験を演出するのが特徴。英国の王立研究所が1825年から毎年クリスマスの時期に開催している「クリスマス・レクチャー」が草分け。著書「ロウソクの科学」で知られるマイケル・ファラデーらが、科学の楽しさを伝えようと始め、最近では国内でも同趣旨の試みが広がりつつある。

2006年3月1日  読売新聞)
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