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(8) 院生企業が最先端授業写真の拡大
![]() 出前実験の準備のため、溶液の温度や水素イオン指数の調整を繰り返す大学院生たち(東京・葛飾のリバネス事務所で)
理系の大学院生を教室に送るベンチャー企業がある。 2週間先に迫った出前実験のテーマは「ホタルの光」だった。 ホタルが持つのと同じたんぱく質と酵素の粉末を、それぞれ試験管の中で水に溶かし、両方を混ぜ合わせると、黄色っぽい光を放つ。試験管を冷やしたり、溶液を酸性にしたりすると、色が変わったり、光が消えたり。実験の狙いは、温度や水素イオン指数(pH)によるたんぱく質の変化を、光の変化でとらえることだ。 3月に入った日曜の午後、10坪(約33平方メートル)ほどのオフィスは、子供たちに理科の魅力を伝えたいという30人ほどの大学院生の熱気であふれていた。このうち8人が17、18日、横浜市の私立学校に出向き、希望する中高校生に実験を披露する。この日は、その予行演習だった。
大学院生を中心とするバイオ教育のベンチャー企業「リバネス」。名前は「巣立つ」という意味の英語「リーブ・ア・ネスト」に由来する。廃校になった小学校の校舎を活用した東京都葛飾区の起業支援施設にオフィスを構えている。 2001年にリバネスをつくった丸幸弘社長(28)は、東大農学生命科学研究科の大学院生。マメ科の植物の根にあるコブ「根粒(こんりゅう)」の中の菌の研究でこの春、博士号を取得した。今後はビジネスに専念する。 リバネスの主力事業は、研究の最先端にいる大学院生ならではの出前実験教室。バイオ系の実験を通し、子供たちに理科の面白さを知ってもらうとともに、多くの子供たちにとってあまり接する機会のない「理系の研究者」を身近に感じてもらう目的がある。 このほか、授業で使いやすい実験材料セットの開発と販売、バイオ系企業の社員研修、バイオ系の大学院生と企業との間の就職あっせんなども手掛ける。 運営スタッフは、首都圏や関西圏を中心にした大学の理系の院生ら。会社の所帯は、役員と社員で計10人ほどだが、約50人のアルバイト学生のほか、派遣登録をした約250人が、出前実験の戦力になる。
出前実験は、現場の教師にとっても、最先端の研究に触れる貴重な機会だ。 「バイオ研究の最先端は、あっという間に陳腐化する。理科の教科書の内容はなかなか変わらないが、リバネスのメンバーは自分の研究を通じて、毎日のように最新情報を仕入れている。それをすぐ教室に持ち込める」と丸さんは大学院生ベンチャーの利点を語る。 今後は、院生の情報網を生かし、研究室ごとの研究内容や雰囲気を大学生や高校生に知ってもらうビジネスも始める。いずれは株式上場の計画も持つ。 リバネスのオフィスには、働きたいという大学院生が、毎週のようにやってくるが、採用に至るのは半分程度。「この仕事が大好きで楽しい人、自分を伸ばしたいと思う人しか雇わない」というだけに、その熱意は、多くの子供たちに伝わるはずだ。(中島達雄) 教師志望者と理科 経済産業省が昨年、全国の大学生1万人に実施した調査(回答約6500人)によると、教師を志望する教育系学部の学生269人が高校時代に好きだった理科の科目は、生物168人(62.5%)、化学104人(38.7%)、物理45人(16.7%)、地学38人(14.1%)。実際の履修は、多い科目から化学、生物、物理、地学の順で、物理と地学は半数を割った。 (2006年3月9日 読売新聞)
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