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伸ばす科学の力

(9) 学者と市民カフェで議論

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研究者と市民らが科学をテーマに語り合った「東工大サイエンスカフェ」

 科学者と市民が語り合うサイエンスカフェが注目されている。

 東京湾の夜景が見渡せるガラス張りのサロン。テーブルには飲み物や軽食が置かれ、ゆったりしたソファに身を沈めた大学生や会社員34人が、「目の疲れ」をテーマに語り合っている。

 今月3日、日本科学未来館(東京・青海)で開かれた「東京工業大学サイエンスカフェ」。サイエンスカフェは、科学者と市民がお茶を飲みながら意見交換をする活動だ。参加者は目が疲れる原因や、疲れた時の対処法などについて、体験を交えながら話し合った。

 同大大学院に今年度後期から新設された「科学技術コミュニケーション論」講座の一環として、講座を受講する学生が企画した。メンバーの一人、大学院1年の藤田大悟さん(24)は「科学的な話題について、専門外の人と意見をやりとりするにはどうしたらいいのか、手応えを感じたかった」と、その目的を語る。

 クローン、遺伝子組み換え、原子力……。科学技術はときに生活スタイルや思想信条までも変えてしまうほどの影響力を持ちながら、高度に専門化する一方だ。市民が理解することは難しいが、研究者の説明はこれまで十分ではなかった。

 それを解決し、両者の意識を高める手法として始まったのがサイエンスカフェ。東京大学の若手研究者らによる「カフェシアンティフィーク東京」はフランスや英国での試みをいち早く研究し、昨年春から東京・下北沢のカフェで活動を開始。「海洋汚染」「アスベスト」などを取り上げ、20日には「細胞」というテーマで話し合う。

 世話人を務める科学技術政策研究所研究員の中村征樹さん(31)は、「一方的に理解を求めるだけでなく、市民の多様な視点と出合うことは、研究活動のヒントにもなる。サイエンスカフェは双方の健全な関係をはぐくむ場として期待できる」と話す。

 一方、全学を挙げて取り組むのは、東北大学だ。昨年8月から毎月、仙台市内の文化施設の一角で開催。同大教授が講師となり、「ニュートリノ」「スマトラ地震・津波」「脳科学」などをテーマに、話し合いを重ねてきた。17日には「遺伝子医療」を取り上げる。

 カフェには毎回200人近くが詰めかけるが、6、7人ごとのテーブルに分け、各テーブルには教員や学生を盛り上げ役として配置する。企画段階から県や市の職員、高校教員らが加わる独自のスタイルだけに、中高生の参加者も多い。

 「理科離れと言われるが、子供が理科を楽しむ仕組みができていないだけ。学校だけで対策を考えるのでなく、大学や行政とともに子供が何をやりたいのかを見つけられる、こうした場作りは大事だと思う」

 コーディネーターを務める同大の福西浩教授(62)(地球物理学)は、大人だけでなく子供たちにとっても、科学技術への興味を芽吹かせる場になると、考えている。(松本由佳)

 サイエンスカフェ 市民と研究者が議論し合うことで、科学技術の現状と課題を考えようと、1990年代後半にフランスと英国で始まった。日本でも2004年度の科学技術白書で紹介され、民間団体や企業、大学などで実践が広まっている。今月も10日にNPO法人「くらしとバイオプラザ21」が東京・茅場町で「花粉症」を、20日には神戸大学総合人間科学研究科が神戸で「これからの科学者」をテーマに開催する。

2006年3月10日  読売新聞)
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