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エリート養成

(12) 官僚育成 大学が実践

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学生たちに官僚としての体験談を語る経済産業省の鈴木英敬さん(立命館大学びわこ・くさつキャンパスで)

 新たな官僚像を探る試みが教育現場で始まった。

 経済産業省課長補佐の鈴木英敬さん(31)は、土曜の朝になると、新幹線に飛び乗り、滋賀県草津市にある立命館大学へ向かう。私学では国家公務員になる学生が多い立命館大が、今春初めて開講した土曜午後の講義を行うためだ。

 鈴木さんは、経産省で構造改革特区を担当した時、3年間で100余りの地域に足を運んだ自称「特区の営業マン」。役人意識の改革を目指し、公務員による勉強会「スーパー公務員養成塾」を設立したことも講師要請の理由だった。

 「今、日本で問題だと思うことを挙げてください」

 鈴木さんが講義で問いかけると、学生からは、治安やいじめ、介護保険と、幅広い分野から課題が挙がった。

 鈴木さんが続ける。

 「昔は公の問題は官が対応したが、今は官と公はイコールではない。官だけで対応できない時代に、どう解決していけばいいかを考えよう」。講義は、行政やNPOなどの実態を調べるフィールドワークや、官僚らと徹底討論する合宿などを通じ、新しい官僚のあり方を半年にわたって考える。

 「従来の官僚は、上から言われたことを確実にこなすことがミッションでした。押し掛け女房のような政策も多かった。これからは、民間と汗をかく、“共汗力(きょうかんりょく)”が必要なんです」と、鈴木さん。立命館大経済学部長の平田純一さん(55)は「関西では官僚に会う機会が少なく、公務員希望者ができるのは筆記試験対策程度。天下国家を論じる意識を学生に植え付けたかった」と、講義の狙いを話した。

 国家公務員採用I種試験で毎年トップの合格者数を誇り、鈴木さんの母校でもある東大も動いた。

 2004年4月に新設した公共政策大学院。知識の量ではなく、課題解決力や政策立案能力を持った官僚養成が目的で、現実の課題に即した演習が多くある。

 先月3日には、院生11人が半年かけた研究成果を千葉県佐原市(現・香取市)で発表した。同市などが進める街づくり計画を独自の視点から研究、その課題と処方せんを同市に提案する試みだ。

 計画では、民間資本を活用して拠点施設を整備する。これに対し、院生の松原義明さん(24)は「起債の活用は可能ですが、ご利用は計画的にということです」と報告。聞いていた市や県の職員がどっと笑い、国家公務員をめざす松原さんも「理論だけでなく現場を踏まえた研究ができました」と手応えを感じたようだ。

 だがなぜ大学院なのか。

 「社会が大学に要求する水準が高くなり、学部教育だけでは、幹部公務員になる人材育成は難しくなってきた。官僚バッシングの中で、優秀な学生が法曹界に流れるという官界の危機感もある」と、森田朗・大学院長(54)は説明した。

 エリートの代名詞だった官僚が真のエリートになるにはどうすればいいのか。関係者の模索が続く。(白石洋一、松本英一郎)

 国家公務員に8割「不満感じた」 人事院が2003年、20歳以上の男女500人に聞いた国家公務員に関するアンケート(回答率95.4%)によると、「不満や憤りを感じたことがある」が79.7%。その理由として、「対応が遅い」が46.1%でトップ。「たらい回しをする」が43.2%、「つまらないことで形式や前例にこだわる」が41.8%で続き、「エリート意識が高く、他人を見下した態度を取ったりする」は35.5%。

2006年4月18日  読売新聞)
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