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教員採用の現場

(5) 難関地元離れ 首都圏へ

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東京・上野に到着した弘前大学チャーターのバス(7日)

 地方から大都市圏の採用試験の受験を後押しする大学もある。

 7日午後5時に1台、8日午前7時に2台。東京・上野に青森ナンバーの貸し切りバスが到着した。乗客は弘前大学教育学部の学生総勢80人。8、9日の週末に行われた首都圏の教員採用試験の1次試験を受けるため、東北自動車道を約10時間かけて集団で上京したのだった。

 バスの借り上げ費用は大学持ちだ。ほとんどの学生の第1希望は青森県だが、大学側は、倍率が低い首都圏を併願するよう促している。バスは今年が2年目になる。

 今春の教育学部卒業生のうち、青森県に採用されたのは、新卒に限るとたったの6人。これに対し、首都圏では、神奈川県13人、千葉県・千葉市12人、東京都5人など計33人が採用された。バスがなかった昨春の卒業生の首都圏の採用は8人だから大幅に伸びた。

 大学としては、青森にこだわって非常勤講師などをしながら何年も受験し続けるより、正規の教員として働いて力を発揮してほしいと願う。就職率を上げたいという理由もある。

 ただ、神奈川県を受けた4年生の女子学生(22)は「バスがなければ受けなかった。神奈川を受けたことに、家族はあまりいい顔をしていない」。青森が不合格で神奈川に合格した場合、そのまま神奈川に行くかどうかは迷うという。

 教育学部就職対策委員会の戸塚学委員長(助教授)も「青森は地元志向が強い。首都圏受験のハードルを少しでも低くするためのバスです」という言い方をする。

 青森県の今年の志願倍率は小中学校など全区分の平均で13・2倍。採用見込み者数185人に対し、2440人が応募した。過去の採用倍率は昨年15・7倍、2年前14・7倍など、7年連続で10倍を超えている。少子化と、それに伴う学校統廃合の影響で採用者数が抑えられており、今後も大幅には増えそうもない。

 全国的に見ても、大都市圏とは対照的に、地方の自治体は採用倍率が高い。2年前の例では高い順に、高知県25・1倍、島根県19・1倍、大分県18・3倍。

 一方で、弘前大に出向いて説明会を開く首都圏の自治体は「うちの県に骨をうずめてくれとは言わない。5年、10年でもうちの県の水を飲むというつもりでいいから受験して」とラブコールを送る。

 地方と大都市圏の採用状況の違いを説明するため、弘前大教育学部は2年前から、毎年秋に、採用試験に向けて動き出す大学3年生の保護者懇談会も開催している。「地元の先生になれると思っている保護者が多い。従来の考えを改めてもらうため」と戸塚委員長。

 千葉県を受けた男子大学院生(25)は「青森の倍率を知ると、なんぼ勉強してもだめかなと思う。それなら首都圏で正規の教員になり、機会があれば青森に戻ればいいかと思っている」と話す。

 地元の大学を出て地元の教員になる――地方のそんな常識も揺らぎ始めている。(松本英一郎)

 非常勤講師 教員免許を持つことを条件に、特定の教科を受け持ち教壇に立つ。給料は担当した授業時間に応じて支払われ、時給は2000円台から3000円台が多い。昨年の学校基本調査(5月1日現在)を基にすると、全国の公立学校で約6万人近くいると推計される。東京都教委職員課によると、都内の公立学校で7月1日現在働いている非常勤講師は約3100人。

2006年7月29日  読売新聞)
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