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イングランド報告

(15) 「市民科」日本でも広がり

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「サークルタイム」の時間に、いじめについて話し合う子供たち(昨年12月、堺市立浜寺小で)

 英国教育の手法や授業を取り入れる日本の学校が増えている。

 英国の教室では、教師と子供が円く座って話し合う場面をよく見かける。「サークルタイム」と呼ばれる手法だ。心の悩みを語り合う、日本流に言えば学級活動のような時間だけでなく、文学作品を読んで感想を述べ合うというように、教科の授業でもこの手法を使う時間がある。

 大阪教育大学の田中博之教授(46)によると、英国ではサークルタイムを、対話力や思考力をはぐくむ「子供のための哲学」という授業に発展させる動きも広がっているという。

 堺市立浜寺小学校は、昨年度から、道徳や総合的な学習、学級活動とは別に時間を設けて、サークルタイムに取り組む。4年生以上を中心に週1度、20分〜1時間を充て、「ボランティア」「スポーツ」「友達」など様々なテーマで話し合う。

 昨年12月に訪ねた時には、4年生が「いじめ」について話し合った。「仲良しやった子に悪口言われて仕返ししてしまった」「1人を皆でいじめたことがある。あかんかった」「いじめられた子は一生心に傷が残ると思う」……。うち解けた雰囲気の中で本音が語られた。

 「サークルタイムは論理的に考える訓練になる。クラス作りはもちろん、あらゆる学力の基盤になると思う」と由良芳子校長(57)。他の教科の授業でも今後、取り組んでいく方針だ。

 英国で中等学校の必修教科となった「シチズンシップ」と、共通の理念を持つ授業も広がり始めた。

 東京都品川区では昨年度から、道徳と総合学習、特別活動の時間を使った「市民科」を全区立小中学校で導入。立教池袋中学高校では「市民性学習」、お茶の水女子大付属小学校では、3年生以上に週3時間、「市民」の授業がある。お茶の水の場合は、社会科の教材を利用し、民主主義社会の担い手を育てることを目指している。経済産業省も、研究会を設けるなどして、「市民」の教育を広げようとしている。

 次週からは東京都が都立高で必修化した「奉仕」や、ボランティアについて考えます。

筋道の通った改革成果主義の弊害も

 「わかる、ことは、たのしい」。移民の多い地域の小学校で、発語に障害のある少年が振り絞るように言った。炭鉱町の中等学校では、内気そうな少女が「学校は自分を大人のように扱ってくれる」。イングランドでの取材中に出合った、忘れられない言葉だ。

 様々な背景の子供たちに、等しく教育の機会と学びの喜びを与えようと、教師たちは一人一人に目を配り、習熟度に応じて細やかな指導をしていた。その奮闘ぶりに胸が熱くなった。

 彼らの努力を可能にしているのが国の制度だ。統一カリキュラムと全国テストは学校に明確な目標を与え、学校監査でその努力の証拠を求めている。多額な教育予算も割かれている。

 英国の教育改革は、経済の停滞と人心の荒廃から国を立て直すために始まった。国際競争力を高めるには、国民全体の学力水準を上げ、自立した職業人を育てることが必要だった。

 確かな将来像の下、細部に至るまで筋道が通った教育改革だと感じた。一方、競争原理の導入によって、懲罰主義、成果主義の弊害が出ていることも明らかで、政府は目下、テスト制度を見直す準備を進めている。

 日本が同じ誤りに陥らないことを望みたい。(松本由佳、写真も)

2007年4月14日  読売新聞)
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