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「平和」の今

(4) 核廃絶 教室から世界へ

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長崎市への修学旅行を前にスケジュールなどについて話し合う生徒たち(9日、倉敷市立玉島北中学校で)=大西健次撮影

 被爆国としての発信の仕方に新しい潮流がある。

 「これまで、イランが核兵器を持つべきだと思っていた。でも、今はいかなる国も核兵器を持つべきではないと考えが変わった」

 こんな発言をしたのは、前日に、原爆忌の平和記念式典に参加したアラブ首長国連邦の女子学生だった。広島市立大学が毎年、世界中から受講生を集めて、夏に開かれている約2週間の集中講座「ヒロシマと平和」。その最終日に行われた受講生同士の討論の場だった。

 講座は2003年に始まった。授業は、市立大の国際学部や付属機関である広島平和研究所の教員らが、すべて英語で行う。

 「広島の大学として、平和を世界に発信することは使命だ」と担当の井上泰浩教授。昨年は米国、シンガポール、英国など14か国の26人が、同大の学生24人とともに受講した。今年の応募は23か国の104人だ。

 講座の開講に当たって、平和や国際関係の研究をしている200近い大学に呼びかけた。その結果、これまでの応募国は、ヨーロッパ、アフリカ、東南アジアにまで広がっている。米ハワイ大学と英メトロポリタン大学は、正式な授業として単位を認めてもいる。

 講座の中身は、原爆投下を報道する各国メディアのスタンスの違いや、国連の役割にまで及ぶ。被爆者から直接証言を聞き、平和記念式典に参加するなど、広島でしかできない体験学習を重視。連日、グループごとの討論の時間も設け、濃密なカリキュラムを組む。自国の教育では知らなかった核兵器の恐ろしさを学び、平和への意識を問い直してもらうこともねらいだ。

 昨年、来日して講座を受けたオーストラリア人ジャーナリストのアンナ・ハインドソンさん(26)は「平和を発信する自分の立場としても貴重な経験だった」と振り返る。2年前に受講したドイツ人大学生ヤン・ホイマンさん(25)は「ドイツの歴史を考え直すきっかけになった」と答えた。

 さらに若い世代はどうだろう。

 岡山県倉敷市立玉島北中学校は、05年からローマ法王、国連、核保有国のトップに、核兵器廃絶を訴える英語でのビデオレターを送るなどの活動をしている。3年生が修学旅行で訪れた長崎で、02年から地元の高校生との交流が始まり、核兵器の廃絶を目指す彼らの署名活動に刺激を受けた。

 実行委員の生徒が、辞書片手に文面を考え、大使館に電話して送り先の住所を調べた。不審に思われて送り返されることもあったが、フランスからは「大統領はあなた方に感謝し、国家元首として常に人々の平和と和解のために尽力します」と返事が届いた。

 今年も要人らに手紙を送るほか、生徒有志が、長崎の高校生とともに、広島で署名活動をする。「平和を願うなら積極的に行動すべきだと思う」と実行委員の大江彩水(あやみ)さん(14)。

 活動が、新たな情報発信につながるのか。その成果が出るのはこれからだ。(大垣裕)

 広島市立大学 国際平和文化都市を目指す広島市が1994年、世界で貢献できる人材育成を目指して開学した。国立の広島大学になかった国際学部、情報科学部、芸術学部の3学部で構成される。付属の広島平和研究所は98年に設立。被爆の歴史を背景に、学術研究活動を通じて、核兵器の廃絶に向けた取り組みを進めるなど、国際的な平和研究機関を目指している。

2007年5月18日  読売新聞)
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