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教師力 大学編

(14) FDの第一人者・田中毎実さんに聞く…形式より蓄積いかせ

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京都大学高等教育研究開発推進センター長

 FDの第一人者は、形だけの教師力向上策を心配する。

 FDとは何か。京都大学高等教育研究開発推進センター長の田中毎実さんは即座に答えた。

 「目の前の学生ときちんとした授業を作っていくこと。そのために、まず教師から変わってみよう、それがFDだ」

 第一人者として、頻繁に全国の大学から講師に招かれ、FDの普及が加速していることを実感する。1999年の大学設置基準改正でFDが努力義務とされて以降のことだ。

 一方で、内容には首をかしげることも多いという。「アリバイ作りの“定食メニュー”に何の意味があるのか。教員の疲労感、負担感を増すばかりだ」と失望感さえあらわにする。

 講演会、合宿研修、学生による授業評価アンケート、授業研究会……多くは、米国から輸入したままの形で行われているだけ。単なるイベントに終始していると指摘する。

 「『新たに何をするか』より、『日常やっていることを組織としていかに広げていくか』が問われるべき時期だ」

 京大のFDが全国に知られるようになったのは1996年4月。いち早く授業研究会を始めたからだ。教材は、田中さん自身の授業「ライフサイクルと教育」。毎週月曜の授業を3年間にわたり公開し続けた。前任地の愛媛で何度も見ていた小中学校の授業研究会に着想を得た。

 「私は機関銃のようにまくしたてる早口で、授業は下手。だから、まな板にあげるにはぴったりの教材」と田中さんは笑う。そのせいかどうかはともかく、毎回、山形大や山口大など全国から大勢の教員が集まり、授業後に「学生にとっていい授業とは?」をテーマに議論が盛り上がった。

 ある私立大学の教員に問われた。「田中さんはなぜもっとわかりやすい授業をしないのか」。その大学の学生は、かんで含ませるような授業でないと、ついて来られないのだという。

 「京大でそんな授業をしたら、学生が寝てしまう。〈いい授業〉に定型はない」と田中さんは確信した。

 学生を指名する際には、学生同士の交友関係まで考慮しないと授業が進められない大学があることも、教員同士の交流で知った。

 懇談の場で、ある私立大学の経営者から聞いたひと言が忘れられない。

 「100人しか入れない教室での授業に200人登録させ、単位を出す。これが、教員にも学生にも歓迎されるいい授業だ」

 昨春入試で4割の大学が定員割れを抱えており、経営者は短期的な合理性を追求しがちだ。だが、形骸(けいがい)化したFDが横行すれば、大学の存在意義すら揺らぎかねないと懸念する。

 今年1月、京大は関西の国公私立13大学で、「関西地区FD連絡協議会」を発足させた。

 各大学ですでに始まっている取り組みを互いに学び合っていくことで、効率的、効果的に推進することを狙う。

 大学のFD義務化は来年4月の予定だ。目前に控え、焦り、戸惑い、途方に暮れる大学もある。だが、ゼロからの出発ではない。「そのことをどの大学も忘れないでほしい」と田中さんは力を込めた。(聞き手・松本美奈)

 たなか・つねみ 大阪大学大学院文学研究科、愛媛大学教育学部教授を経て1995年に京都大教授。昨年4月から現職。大学教育学会常任理事。59歳。

2007年7月20日  読売新聞)
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