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(1) 企業と自治体 父親参加へ連携写真の拡大
![]() 小学校で双子の娘と息子にバッティングの指導をする桐田さん(中央)
父親が学校行事に参加しやすい職場作りを、自治体が後押しする。 鳥取県米子市に住む会社員桐田浩さん(42)は、平日の夕方、スーツからジャージーに着替え、市立福生東(ふくいけひがし)小学校に現れた。双子の長男、拓実(たくみ)君と長女、実奈(みな)さん(ともに小学4年)が所属する地域の野球チーム、福生東スポーツ少年団を指導するためだ。 「お父さんはよく学校に来てくれる」とうれしそうな2人。自身も高校球児だった桐田さんは、チームのボランティアコーチとして放課後や土日の練習に顔を出す。さらに、会社の休暇制度を活用し、授業参観やマラソン、たこ揚げ大会など、平日の学校行事にも参加している。 「頑張っている子供たちの姿を見るのはうれしい。うちの子がどの子と仲がいいのか、クラスの雰囲気もよくわかる」と桐田さん。ホームヘルパーの妻、光恵さん(47)も「助かっています」と満足そうだ。
◎ 桐田さんが勤める飲料品販売会社「コカ・コーラウエストジャパン」(本社・福岡市)には、休日と年次有給休暇を使って半期に5日まで連続して休める「爽(さわ)やか休暇」と、どんな理由でも年5日まで優先的に休める有給の「指定休日」がある。 父親たちが学校にかかわることを側面支援しているのが、鳥取県の「家庭教育推進協力企業制度」だ。 県内の山陰支社、鳥取、倉吉、米子各支店は昨年8月、県教委と協定を締結。会社は「爽やか休暇」や「指定休日」を授業参観や学校行事に活用するよう、社員に呼びかけている。桐田さんが働く米子支店の社員10人のうち、小中学生の子供がいる男性社員3人すべてが、この制度を使って学校行事に参加するようになった。 福生東スポーツ少年団は、6月に全日本学童軟式野球大会の県大会で優勝、8月に水戸市で開かれる全国大会に出場する。子供たちはまだレギュラーではないが、桐田さんは「爽やか休暇」を利用して一緒に応援に行くつもりだ。
◎ 家庭教育推進協力企業になるには、3年間の協定期間に、〈1〉参観日や学校行事の参加への働きかけ〈2〉「職場参観」などの実施〈3〉従業員の子供との交流活動〈4〉その他の子育て支援策――のうち二つ以上を推進するのが条件。協力企業になると、県のホームページや広報で紹介され、県発注の物品調達などの入札への優遇を受けることもできる。 鳥取県は全国でも共働き率が高く、6人の子持ちだった片山善博・前知事時代から父親の育児支援には熱心な自治体だ。次世代育成支援対策推進法を受け、県の社会教育委員が「家庭教育には企業の協力が不可欠」と提言。県教委は授業参観への父母の参加状況を調べ、企業や労組の意見を聞いたうえで、2005年10月から制度を始めた。 現在までに締結した76社の中には、「学校行事参加申込書」を提出した社員が優先的に休めるよう配慮する石油販売業「堀田石油」(境港市)や、男性社員による学校行事参加の手記を社内報に掲載する計画の食料品製造販売業「大山ハム」(米子市)などのユニークな取り組みがある。
◎ 同様の制度は他の自治体にも広がっている。北海道、滋賀県、愛媛県の各教委は昨年から協定制度を始めた。愛媛県の協力企業「伊予銀行」(松山市)は今年、高校生までの子を持つ従業員に向けて年2日の「参観日休暇」を設けた。また、共働き率が全国1位の福井県の「父親子育て応援企業表彰」や、福岡県や埼玉県の「子育て応援宣言企業登録」でも、学校行事への参加を推進する企業が増えている。 だが、いずれの自治体でも、学校現場に父親の姿が目立つほどにはなっていない。鳥取県教委も啓発のために企業向けに家庭教育の研修会も開いているが、授業参観への参加率などの実態調査はまだだ。 桐田さんの子供たちが通う福生東小の松本次朗校長(57)も「父親も学校にかかわってくれるようになれば励みにもなる。ありがたい制度だが、まだ普及しているとは感じられない。もっと学校関係者に周知し、学校と連携して普及させることも考えてはどうか」と提案する。 地道な試みの課題も見えている。(松本由佳、写真も) 国の提言 具体策欠く 仕事と家庭生活の調和を図る「ワーク・ライフ・バランス」という考え方が注目されている。政府の少子化社会対策大綱や男女共同参画会議、そして教育再生会議の報告にも盛り込まれた。「社会総がかりの教育再生」をうたう報告では、企業に対し、家庭や地域社会と同様に教育に参画することや、従業員が育児や学校教育に参加できるような休暇制度の整備を提言している。 2年前、全面施行された次世代育成支援対策推進法が企業に求める行動計画の策定指針にも同様の提案がある。日本経団連も今年4月、加盟企業に向けた「企業行動憲章」の手引に盛り込んだ。 NEC、松下電器、住友スリーエムのように、学校行事に活用できる休暇制度を設ける企業も出てきた。ただ、まだまだ、父親が育児や学校にかかわることを促進する制度を持つ企業は少なく、企業自体が学校に参画する例も十分ではない。国の具体的な施策はなく、「かけ声だけ」の印象が強い。 現状について、第一生命経済研究所の主任研究員、松田茂樹さん(37)は「休暇制度の整備とともに、企業のトップが従業員に活用を促すことが大切だ。企業側に負担を求めるだけでなく、行政の支援が欠かせない」としている。 (2007年7月24日 読売新聞)
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