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08入試最前線

(1) 大学が作った問題、高校教員が「良否」

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一般入試向けのオープンキャンパスでは予備校講師を招いた入試対策講座が開かれた(昨年11月17日、産業能率大自由が丘キャンパスで)

 入試問題を高校教員に批評してもらう大学がある。

 「この大学の読解問題は文章をちゃんと読めば解けるように作られています」

 受験生に、過去の入試問題を分析してみせる予備校の国語講師は、問題の分かりやすさをさりげなく評価した。場所は予備校ではなく、産業能率大学自由が丘キャンパス(東京都世田谷区)だ。昨年11月17日、大学見学会の一環で開かれた入試対策講座の場だった。

 大学見学会で受験生に入試問題を手ほどきする大学は今や珍しくない。だが、同大ほど、高校の教員の声を反映させて練り上げられてきた入試問題は、あまりないかもしれない。

 神奈川県伊勢原市にメーンキャンパスがある同大は、1999年から毎年5月ごろ、その年に行われた4種類の一般入試問題について、英語、国語、数学、地理歴史、公民の各教科ごとに2人ずつ、地元の高校教員らを集めて批評してもらっている。

 奇をてらわず、重箱の隅をつつくような問題ではなく、どの教科書にも出ている範囲で入試問題を作りたい。それなら実際に授業をしている高校の教員に意見を聞こう――。そうした考えで始まった。

 産能大は、経営、情報マネジメントの2学部で、学生数約2800人の小さな大学。全入時代を迎えて、基礎学力のある学生の確保のために、良問作りにこだわっている。

 「最初のころはサンドバッグ状態でした」と林巧樹入試企画部長(48)が振り返る。公正を期すため高校側には明らかにしていないが、入試問題の批評会議には、問題を作成した大学教員が出席したこともある。顔を引きつらせて批評を受け止めていた人も、顔を真っ赤にして反論する人もいたという。

 例えば国語で、「文意を説明しなさい」といった問題について、「受験生が何を書けばいいか分からない」と、問い方をただす指摘もあった。ただ、高校教員の声には説得力があった。

 日本史では「学習指導要領の改定で、絵や図を取り入れて資料から読み解かせる問題が必要だ」と指摘され、翌年からすぐに取り入れた。世界史でも地図や写真、グラフを利用した問題が毎年出題されるようになった。2007年度の入試では、ギリシャのパルテノン神殿やローマの円形闘技場コロッセウム、ジャワの仏教建築ボロブドゥール寺院の写真が登場した。

 毎年、同大の問題を批評してきた神奈川県の元高校教員松木謙一さん(55)は、世界史の教科書執筆者でもある。「最初は言いたい放題だったが、大学側が毎年まじめに改良しているので、今は良問になった」と評価する。昨年5月、高校教員らを集めて開かれた会合では、「あえて言えば…」「強いて言うなら」という程度の指摘しか出なかったという。

 同大入試委員長の木村直也教授(51)は言う。「誰も解けない難問では、入試の選別効果がなくなる。『問題が死ぬ』ことになる。それが四択なら、ただのくじ引きになってしまう」。その結果、学力のある生徒が不合格になり、学力のない生徒がたまたま受かるようなことが起こる。

 入試問題を改善しなければ、大学が「墓穴を掘る」ことになると危機感を抱いていた。「大学内でも入試問題を作る際には当然、教員同士で議論しているが、内部的な評価は限界もある」と木村教授。

 高校教員による入試問題の評価を通じて、高校生の学力の実態を肌で感じることができ、入学後の指導にもつながる。

 入試を通じた大学の取り組みの効果は決して小さくない。(大垣裕)

私大の12%問題作り外注…入試多様化で負担増

 文部科学省の調査では、2007年度の大学入試で、全国の公私立大学741校のうち私立大71校が、入試問題を予備校などの外部に発注していた。私大全体(578校)の約12%を占める。すべての教科を外注した私大は18校、一部外注53校。教科別に見ると、国語49、外国語、数学各41、理科31、地理歴史29、公民15となっている。

 「高校の教育に詳しい教員がいないので問題を作れない」という理由のほか、入試日程、選抜方法の多様化で、一つの学部でも複数の入試を実施する例が増え、負担が大きいことを挙げた大学もあった。

 文科省では「入試問題の外注は、機密性や公平性の点から疑念を招くおそれがあり好ましくない」として、大学に慎重な対応を求める通知を出している。

 一方、大学入試センター試験では1998年度入試から、教育委員会勤務の高校教員経験者ら約70人を点検協力者に委嘱、事前に試験問題の難易度や出題範囲を点検してもらっている。高校のカリキュラムの複雑化が背景にある。また、センター試験後の毎年2月には、高校教員ら協力者約80人と作問した大学教員による評価委員会を開き、翌年の問題作成に生かしている。

 なお、問題作成に携わる大学の教員は400人余。センターは4月以降、2年の任期を終えた問題作成者の名前を公表する方針だ。

2008年1月4日  読売新聞)
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