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(1) 改革に着手 信濃教育会写真の拡大
![]() 信濃教育会教育研究所内の研究室で自分の研究内容を語る研修生。「授業研究に没頭できるのは魅力だ」という
全国的に著名な教員職能団体が、改革に向けて動き出した。 「Renewal ZENKEN」(リニューアル全研)と大きく書かれたポスターが昨夏、一斉に長野県内の小中学校に張り出された。「明日の授業が変わる」「『参加してよかった』の一言が聞けることを目指して」といった言葉も躍る。 県内の教員で作る信濃教育会が毎年秋に、県内各地で開く信教全県研究大会(全研)の参加募集。120年以上の伝統を持ち、幹部陣を校長OBで固めた組織の最大行事が、大きく変わることを伝える内容だった。 何が変わったのか。昨年11月の全研は、公開授業の後の検討会を10人程度の少人数グループで議論し合う方式に改めた。「従来はベテラン教師が意見を言って、若手がありがたく拝聴する感じだったが、参加者全員が意見を言わざるを得なくなり、議論の密度が濃くなった」(戸谷高事務局長)。 さらに他県からも、大学の教授や、詩「のはらうた」で知られる詩人で絵本作家でもある工藤直子さんらを招き、教科ごとに体験型講座も企画した。授業改善にすぐにでも役立ててもらう狙いからだ。 こうした見直しの結果、800人前後で推移していた参加者が昨秋は約1200人。アンケートでも「参加してよかった・大変よかった」と答えた割合が95%に達し、宮本経祥会長(74)は「大きな手応えを感じている。来年はさらに良いものにしたい」と満足げだ。
全研での発表に影響を与えたのが、小諸市立坂の上小学校の研究授業。信濃教育会教育研究所の牛山栄世副所長も注目してきた。 「ギャングエイジと言われる4年生という発達段階にある子どもたちではあるが、もう少しお互いに相手の気持ちを察したり、心情を慮(おもんぱか)ったりできるようになってほしい」 総合的な学習の時間の「二分の一成人式」の研究授業では、指導案の冒頭に、こんな担任の思いがつづられていた。日常のクラスでの授業に近づけ、現実感を出すためだ。授業終了後の検討会も、小グループに分かれた座談会形式で、「自分だったらこうする」といった実践的議論が次々と飛び出した。 同小の研究主任の相原修教諭(42)は「かつての研究授業は机上の空論になっていた」と振り返る。
信濃教育会の改革が本格化したのは今年度からだ。昨年8月、県内の大学教授、県経営者協会や農協など経済界の幹部、市町村教委幹部ら21人を集めた「信濃教育会あり方検討委員会」を発足させた。 これまでに、「社会や産業界がどんな人を求めているか理解して教育にあたってほしい。産業界ともっと連携すべきだ」「立派な研究をすることに向きすぎている。もっと実態を見つめた研究を深める場でなくてはならない」といった意見が出ている。 県民の信濃教育会に対する視線も厳しい。 長野県世論調査協会が「長野県は教育県だと思うか」と聞いたことがある。1999年のことだ。「思う」はわずか6・6%。「思わない」が65・8%にのぼった。思わない理由としては「大学進学率の低さ」(46・7%)を筆頭に、「かつての教育県のよさが今はない」、「教師や学校施設がよくない」と続き、「信濃教育会が指導力を持ちすぎ」という回答も16・9%あった。 一方、他県の人に教育県と言われたことがある人が64・8%にのぼり、県の内外で大きな落差があった。ただ、世代が下がるにつれて、この数値は下がっていた。 教育県長野の残像が、再び実像となるのか。それは長い目で見る必要がありそうだ。(宮本清史、写真も) ◆「東の長野西の岡山」 教育県を自任する県は各地に存在するが、古くから知られるのが、長野県と岡山県だ。 両県とも、江戸時代に寺子屋や私塾の数が全国トップレベルで、歴史的土壌が明治以降の就学率の高さにつながり、「東の長野、西の岡山」と並び称された。 長野県の場合、質的な面でも全国の教育関係者に知られた。大正期には、児童の個性を尊重する〈信州自由教育〉が広がり、暗記中心だった当時の教育界に与えた影響は大きい。 教育県という言葉が、教育振興を掲げる際のスローガンに使われる例は多い。東京、大阪、京都、北海道を除く43県中、県のホームページで「教育県」という文字が登場する計は20県にのぼる。 鹿児島では伊藤祐一郎知事が「日本一の教育県宣言」をマニフェストに掲げた。広島や佐賀でも「教育県ひろしまの創造」「教育県佐賀の再生」といった言葉がキャッチフレーズとして使われている。富山や岡山などのように、県の産業関係部局が工場誘致で「教育県」をアピールする例もある。 信濃教育会 1886年(明治19年)設立の教員職能団体で社団法人。校長、教頭を含めた長野県内の小中学校教員の約9割が加入する。小学校理科などの検定教科書も編集・発行している。教育研究所を持ち、兼任を含めた研究員が4人いるほか、県から研修員として40歳前後の教員8人が派遣され、教科の指導法などを研究している。現所長は教育学者の稲垣忠彦・東大名誉教授。 (2008年2月13日 読売新聞)
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