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シニアの学び

(12)働き続け知識吸収・還元


「若い社員と一緒に、勉強させてもらっている」と話す瓦井さん(右)。ベテランの経験と知識は、職場で頼りになる存在だ(足利市の「菊地歯車」で)

 高齢者の雇用対策が強化される中、60歳を過ぎても仕事の勉強が続く。

 栃木県足利市の瓦井順一郎さん(68)は8年前、IHI(旧石川島播磨重工業)を定年で退職した。仕事上のつきあいがあった同市の歯車メーカー「菊地歯車」(従業員121人、菊地義典社長)から、「大手企業の経験や発想を生かしてほしい」と製造技術アドバイザーに招かれ、同社に再就職した。

 IHIで大型タービンなどの生産ラインの改善に取り組んできた瓦井さんにとって、自動車など機械の歯車を量産する現場は、初めての経験。蓄積した知識で助言できる場面もあるが、「若手と一緒に勉強する場面が増えた。新しい仕事に不安はあったが、やってみると意外にできると思った」と笑う。

 歯車の設計から試作、量産まで手がける同社にとって、腕のいい技術者の育成は重要課題だ。ベテラン社員が時に若手を指導し、時に競い合いながら技術を高めることが、企業の活力につながる。

 「瓦井さんの仕事ぶりは若手の手本。ベテラン社員を企業内で生かせる仕組みを、今後も整備したい」(菊地社長)。同社は昨年度、若い技術者の育成を図りつつベテランを積極的に活用する事例として、高齢・障害者雇用支援機構(東京)から表彰された。

 国は2013年度までに、定年延長など65歳までの雇用確保を段階的に講じるよう、事業主に義務づけた。慶応大商学部長の清家篤教授(労働経済学)は「かつての55歳定年の時代の仕事を短距離走とすれば、現在は長距離走への移行期」と例える。

 若いころに覚えた仕事一つで定年まで全力疾走するのではなく、長距離走の途中の給水ポイントのように、人生半ばの40歳代などで、シニア生活に備えた新しい仕事や知識を学び直す仕組みも必要だ。

 清家さんは「高齢者が長く働くことは、医療費や社会保障費を削減するなど、社会全体の利益にもつながる。40歳代での研修制度に助成するなど、企業の努力だけでなく国や社会がサポートすることも重要だ」と提言する。

 同機構は、経営コンサルタントや中小企業診断士などを「高年齢者雇用アドバイザー」に認定し、職場向けに高齢者が働く能力を高める「生涯現役エキスパート研修」などを実施する。高齢でも働ける社内制度や環境を作りつつ、40〜50代のうちから60代でも通用する仕事の力を育てるのが目的だ。

 60歳を過ぎても、仕事や知識を学ぶことは遅くない。清家さんは「新たに学ぶことと、すでに学んだ知識や経験を伝えることの両立が望ましい。高齢者の生きがいになると同時に、知識の還元が社会の財産になる」と指摘する。瓦井さんのような仕事生活は、一つの理想型と言える。

 中年世代での学び直しの場と、シニアが満足できる学びと活躍の場。両方の整備が、65歳定年時代に軟着陸するための鍵になりそうだ。(宮崎敦、写真も)

 60歳以降の雇用 厚生労働省の調査では昨年6月現在、従業員50人を超える企業の93%が60歳以降の雇用措置を導入済み。60〜64歳の労働者は99万5000人で、昨年定年を迎えた約40万人のうち30万人が、雇用継続予定となっていた。このため団塊世代の大量退職が本格化するのは団塊世代が65歳を迎える2012年以降という観測もある。

2008年4月23日  読売新聞)
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