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教育ルネサンス

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学生をつくる

(1)意欲引き出す 授業や行事

入学式で浜名学長(左)と握手する新入生(4月2日、関西国際大で)

 学生のやる気を奮い起こすため、大学が知恵を絞る。

 「おめでとう」「ようこそ」−−。えんじ色のアカデミックガウンを着た浜名篤学長(51)が新入生を1人ずつ壇上に招き、手を握っては声をかけていた。4月2日、満開の桜に彩られた関西国際大学(兵庫県三木市)の入学式。学長に就任した3年前に始めた握手を、今年は427人と交わした。30分以上もかかる歓迎の儀式に、新入生たちは戸惑いながらも笑顔を見せる。

 入学式後も「歓迎」は続く。学長や上級生らが南京町など神戸市内の観光地を1日がかりで案内する「神戸ウオーカー」、キャンパス内でのバーベキュー大会……。「本学生として、自信を持って一緒に学ぼうと伝えたい。そのための活動だ」と浜名学長は強調する。

 同大が一貫して重点施策に掲げるのが「鉄は熱いうちに打て」だ。10年前の開学当時、無気力な学生が目立ち、退学率の高さにも悩んだ。4年間で一つでも「これならできる」という自信をつけて社会に送り出すには、入学直後からの戦略が欠かせない。次々と編み出された歓迎行事は、その第1弾だった。

 開学の翌年には、成績優秀者の授業料の5〜10%を免除する奨励金制度を創設。4年前には学習や資格取得、課外活動に力を入れるとポイントがたまるマイレージシステムも始めた。資格取得5〜10ポイント、大学祭での活躍10ポイントといった具合だ。1000ポイントたまると米国研修旅行を贈る。その達成者はまだ1人だが、奨励金対象者は全体の2割前後を占める。

 入学後の意欲を高めるこうした工夫で「面倒見のいい大学」という世評が広まり、昨年度の退学率は約4%と、3年前に比べて半減した。

 今年度から新たに加えたのが、1年生の必修科目サービスラーニングだ。社会貢献活動を通し、学ぶ目的や意味を見つめ直してもらう。

 浜名学長はよく学生に将来の夢を尋ねる。「ほどほどの暮らしができる中小企業で働きたい」と答える学生が大半。将来の夢はないとの答えも少なくないという。「『面倒見のいい大学』は、過保護と同義語という面もある。大学という小さな社会で充足し、新しい学びへの意欲が乏しくなっては困る」と分析し、校外に出て行くことを考えた。

 3月には、山下泰生副学長(48)と山本秀樹講師(39)が、教育学部教育福祉学科の2年生3人を連れ、カンボジアに1週間滞在した。今後の授業展開に学生の視点を取り入れるためだ。

 まだ内戦の後遺症を引きずる国で、病院や児童養護施設に足を運んだ学生たちが様々なことを吸収する姿を見て、山下副学長は生の現実を通した学びの効果を確信した。「1年生にもぜひ経験させてあげたい」と参加者の1人、村井香那さん(20)。

 ただ、1年生全員を学ばせるのは衛生・治安面から難しいと判断、カンボジアでの学習は自由参加とし、今年度は、地元を中心に専門分野と関連ある活動をすることになった。三木市と韓国の子供たちの交流の橋渡しをしたり、同市内の高齢者との交流を深めたりするための授業が、すでに始まっている。

 「新入生のやる気を起こす効果はある。今こそ教員の力量が問われる」と山下副学長。問題は教員の負担感だ。

 カンボジアに渡航する前の数週間、山本講師は学生たちと何度も学習会を開く一方、現地での安全確保について調べ、保護者向けパンフレットも作った。研修後も、学生が発案したチャリティー募金の意義などについて共に学び、「行ってきました、だけでは学びの意欲は喚起できない」。

 どの教員も同じように取り組めるのか。学生の学びを変える試みは、教員を変える試みでもある。(松本美奈)

 「教育ルネサンス」では、大学の教育力向上の取り組みを、「大学の実力」シリーズで紹介していきます。

 サービスラーニング 社会貢献を通して学生が学ぶ意味や目的を確認し、学校で得た知識を深める体験学習。調査・交渉・企画力を身につけ、職業意識や社会への関心も高めるとされる。欧米では、次代を担う市民育成にもつながるとして、大学や高校が様々な形で導入している。

「初年次教育」で学ぶ習慣確立

国語力のテストを受ける徳島大学の1年生(4月3日)

 大学生に学ぶ意欲やコミュニケーション力を持たせるため、新入生を集中的に教育する「初年次教育」がここ数年、全国的な広がりを見せている。大学教育の質の保証が厳しく問われているからだ。学ぶ意欲を欠いたままでは中退者増にもつながり、学校経営を圧迫するという面もある。

 今年3月には初年次教育学会(会長=山田礼子・同志社大学教授)も設立された。会員には東京大や慶応大、早稲田大など約50大学の教職員約200人が名を連ねる。

 全国の国公私立大の1980学部長に昨年12月、国立教育政策研究所が実施した調査で、回答した1378学部の9割が何らかの取り組みを実施。1年生段階では〈1〉コンピューターを使った情報処理や通信の基礎技術〈2〉リポートや論文の書き方などの文章作法〈3〉自立した自己学習の基礎〈4〉図書館の利用・文献探索の方法〈5〉学生生活における時間管理や学習習慣の確立−−が重視されていた。

 大学は4年間で学生の力をどれだけ伸ばせるか。その初めの一歩として、初年次教育に熱い視線が集まっている。

2008年6月3日  読売新聞)
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