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学生をつくる

(3)日本語鍛え 学ぶ姿勢

辞典の表現の違いについて話し合う学生たちと森下教授(左奥)(京都精華大で)

 予備校からも人材を得て、習熟度別に日本語を教える大学がある。

 「見て! 『新明解』の『恋愛』の説明、生々しい〜」「こっちは、あっさりだよ」「おもろいやん」

 5月初め。連休前の街のにぎわいをよそに、京都精華大学(京都市)の講義室では、約30人の学生が机に積んだ6種類の辞典を熱心に見比べては声を上げていた。「日本語リテラシー」の授業。リテラシー(読み書き能力)にとどまらず、自ら調べ、考え、表現できる大学生に育てることを目指した人文学部1年生の必修科目だ。

 この日は、新明解国語辞典(三省堂)の面白さをつづった「新解さんの謎」(赤瀬川原平著、文春文庫)を読ませた上で、実際に他の辞典と比べて感想を書かせていた。辞典の使い方を覚えさせるだけでなく、日本語の豊かさに気づかせることを狙った。

 「今の子は関心の対象が狭いが、語彙(ごい)が豊かになれば関心も広がる。そこから大学での学びが始まる」。大手予備校の河合塾と駿台予備学校で小論文を通算約20年教えた日本語リテラシー教育部門長の森下育彦教授(53)が授業内容に胸を張る。

 一方で、森下教授は、事実羅列型文章の多さが気になっている。例えば「私の好きな季節」を書かせると、「春は花が咲く。入学式がある」と表面的な現象を連ね、なぜ好きか伝えようとしない。「工夫しなくても伝わるメールに慣れているからだろうか」

 本格的に授業が始まったのは3年前。日本語リテラシー教育部門は、学長直属の組織として発足、学外からも人材を集めた。教員4人と助手10人でチームを編成し、徹底的に指導をするため、課題作文を書かせて習熟度別クラスに分ける。漫画や映画も教材に、課題に沿って何を書きたいかをメモさせる。それを元にした討論や教員との面談、添削指導も経て、1学期に1000〜2000字の課題作文五つを完成させる。

 今年の場合、約450人の1年生が30人前後ずつの11クラス。課題は、上位クラスでは、「記憶に残ること」「他者との間合い」「変身」など抽象概念も入り、下位クラスでは「私が影響を受けた人・モノ・こと」などとなる。学生の自尊心に配慮し、森下教授なら「Mクラス」など担当教員の頭文字で表示する。どのクラスでも、課題を通して自分を客観的に見つめ、他者とのかかわり方を考えさせる構成は共通している。

 欠席すると呼び出しを受けるほど出席管理は厳しいが、昨年度の学生満足度は、どのクラスも9割以上だった。一方で、人文学部は今年度、定員割れした。在籍学生の高評価が受験生には届かない。

 悩みながらも今後、同様の授業を、漫画、芸術、デザインの3学部にも広げ、全学的な取り組みにする。漫画家でもあるヨシトミヤスオ副学長(70)は言う。「学生の学びを、大学側が一からきちんとおぜん立てしなければならない時代だからだ」(松本美奈、写真も)

 大学生の日本語力 独立行政法人「メディア教育開発センター」(千葉市)は4年前から、入学したばかりの大学1年生に、日本語の語彙力、文法や漢字の知識を問うテストを実施している。昨年度の調査(54大学、約2万9000人)では、国立大の9割が高3レベルだったが、私立大では中1から高3まで幅広く、中学生レベルが6割以上の大学もあった。

2008年6月5日  読売新聞)
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