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学生をつくる

(6)寮生活で協働、調整力

共用の台所でカレーを作る東北公益文科大の寮生たち

 コミュニケーション能力をつけるため寮生活を奨励する大学がある。

 東北公益文科大学(山形県酒田市)のキャンパス内には、コテージ風の小規模な20棟の建物が並ぶ。「ドミ」と呼ばれる学生研修寮だ。

 5月中旬の夕刻、女子学生9人が暮らすA2棟からカレーの香りが漂ってきた。共同台所で、この時間にいた4人の1年生が仲良く調理をしていた。ニンジンをむく人、タマネギを切る人、水の量を量る人、使ったまな板を洗う人。各人が自然に自分の役割を見つけて、あっという間にカレーができた。

 寮の住人は1棟8〜9人。男子は14棟に120人、女子は6棟に52人で、177人の定員はほぼいっぱいだ。

 研修寮と名を付けたことには訳がある。「親元を離れ、一人で自由に生活できるようになった大学1年生の時期にこそ、意識的に人とかかわる経験をさせたい」(伊藤真知子副学長)。数百人が一つの建物に住むような寮にしなかったのも、そのためだ。

 同大は「公益学」を学ぶ単科大学として2001年に開学した。それまで、山形県の庄内地方には4年制大学がなく、当時の周辺14市町村と県が出資して設置された公私協力方式の大学だ。

 社会のために活動できる人材作りには、個々の利害が調整できるコミュニケーション能力を付けることはかかせない。そんな能力をはぐくむ場として1年生を優先的に入寮させてきた。開学当初は15棟だったが、希望者が多くて全員が入りきらなかったため増やした。今年度は1年生199人のうち、自宅通学生が55人、賃貸アパート暮らしが33人に対し、寮生が111人。

 棟ごとの話し合いで、掃除もゴミ出しも食事作りもルールを決める。A2棟では、食事当番は定めず、夕食時に寮にいる学生が一緒に調理する。材料もみんなで買って割り勘。「安くあがっていい」と好評だ。別の棟では、ご飯を炊く当番だけを決めておいて、おかずは各自で準備する。全くバラバラに夕食を取る棟もあるが、費用は高くなる。光熱費の請求も棟ごと。生活費を抑えるため一丸となって節約に励む。

 夜中まで共同リビングで大笑いしながらゲームに興じる、ご飯当番を忘れてしまう、他人が電気をこまめに消しているのに自室でクーラーをつけっぱなしにする……。そんな寮でのトラブルも大学側は織り込み済みだ。大学事務局に相談があった場合も、解決のための話し合いを促している。

 1年生の戸塚深智(みさと)さん(18)は「将来、NPOやNGOで活動をしたいが、そういう場では絶対に協働が必要になる。人とやっていくということを、寮で経験するのはきっと役に立つと思う」。

 寮を出た後も、寮生同士で部屋を借りて暮らす上級生もいる。人とかかわる力は備わっているようだ。(山田睦子、写真も)

 公私協力方式 地方自治体が用地などを提供したり、補助金を出したり、財政的な協力をして私立大を開設する方式。自治体には、大学誘致で地域が活性化される期待がある。文部科学省によると、記録がある1982年度以降、140の大学や短大がこの方式で開設された。ピークは2000年の11校。

2008年6月10日  読売新聞)
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