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理科再興

(15)科学実験 文系学生も


DNA抽出実験をする慶応大の文系学生たち(5月)=鷹見安浩撮影

 科学に対する視野を、文系の大学生に広げる取り組みが続く。

 赤、黄、紫、黒。色とりどりの液体が入った容器が並んだ。東北大学(仙台市)が昨年度から開講する「文科系のための自然科学総合実験」の授業。対象は、文、教育、経済、法学部の1年生だ。

 液体の正体は、学生が持ってきたトマトジュース、ショウガ、ナス、しょうゆだった。

 学生たちは、食品などに含まれる色素を表面に塗布することで、より多くの電気を発生させる色素増感型太陽電池を作り、どの材料が一番多くの電力を生み出せるかを調べる。賞品も用意され、学生たちもおのずと力が入る。

 大学も、新たに器材を購入するなど、講義全体で約5000万円を投じる力の入れよう。太陽電池だけでなく、地球温暖化や胚(はい)性幹細胞(ES細胞)」など現代的テーマが並び、理系教員19人が「とことん、文系学生の視点で練り上げた」と自負する。

 エネルギーがテーマの今回は、資源の少ない日本が、世界有数の太陽電池生産・利用国であることを紹介。DNA鑑定の回は「コメの産地偽装は可能か」、受精の瞬間を顕微鏡で観察する回では「体外受精や遺伝子治療はどこまで許されるか」と問いかける。

 「毎回、社会問題について考えさせられる。生命の誕生は、法律とも関係が深く、貴重な経験になった」と法学部の葛西彩子さん(19)。まとめ役の須藤彰三教授(53)は「現代社会の基盤である科学的手法を知り、それぞれの専攻で役立ててほしい」と願う。

 今年度の受講者は50人。ただ、設備や費用の面から、受講は文系学生の1割に当たる80人が限界だという。

      ◎

 慶応大学日吉キャンパス(横浜市)では1949年の新制大学移行以来、文系学生に実験講義をしている。受講者は現在約3000人。文、商、経済、法の4学部の1年生の7割に当たり、他大学をはるかにしのぐ。物理、化学、生物のどれかを選び、講義と交互に隔週で実験に挑む。毎日、どこかで実験が行われており、指導する教員らスタッフは総勢160人と、まさに大学挙げての取り組みだ。

 試験管の中をガラス棒でかき混ぜた文学部の女性は「実験は高1以来」と緊張した様子。手つきはぎこちなかったが、サケの卵細胞のDNAがガラス棒に絡みつくと「きれい」と目を輝かせた。法学部の男性は、電卓を片手に実験データとにらめっこ。指導を受けながら、なんとか公式通りの計算結果を導き出し、思わずガッツポーズを決めた。

 費用と手間をかけた実験講義には、「専門教科を教えることに力をいれるべきだ」という声もあるが、講義を統括する表實教授(64)は「学生に伝えたいのは科学的な視野や思考方法だ」と反論する。

 「実験を通して科学を知ることが文系学生の財産になる」。両大学の思いは同じだ。(大広悠子)

      ◇

 次週からは少年院での教育をテーマにします。

 広がる文系学生向け実験講義 慶応大が2006年、全国の4年制大学729校を対象に行った調査では、94.2%が、文系学生が履修できる自然科学系講義を開設していた。うち「実験講義がある」は25.2%(国立28校、公立7校、私立39校)。調査後にも茨城、東北、山梨大などが実験を含む講義を文系向けに開講している。

2008年7月26日  読売新聞)
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