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(1)市立小中の全教員 パソコンで授業小中学校の全教員が、コンピューターで教科指導できる自治体がある。 パソコンの前に座った児童が、画面に表示される計算問題をノートで解き、次々と答えをキーボードで入力していく。身を乗り出すようにして問題に向かう、その集中力に圧倒された。 東京都日野市立平山小学校のパソコンルームで行われていたのは、5年生の算数の授業だった。基礎・基本を習得するために考え出された学習ソフト「インタラクティブスタディ」。小数と整数のかけ算・わり算で、一問ずつ答えの正否が判定され、次の問題が難しくなったり、やさしくなったりしていく。 教員用のパソコンには、児童の進み具合や、問題ごとの正答分布が表示される。1問に5分以上かかっている子にはランプがつき、つまずいている子もひと目で分かる。 「だれも騒がないし、自分のペースで落ち着いて問題に取り組めるのが好き」「先生に教えてもらうと冷やかされることもあるけど、間違えるとパソコンが一つ一つアドバイスをくれるのも便利」と子供たち。 担任の佐野敏孝教諭(26)は「自分のペースで取り組むよう指示している。単元の終わりに復習を兼ねて取り組むと有効。得意な子はゲーム感覚でどんどん新しい問題に進んでいくので、苦手な子にじっくりとついてあげられる。一斉授業ではなかなか難しい個別指導がやりやすくなった」と評価する。 ◎
日野市はICT(情報通信技術)を教育現場に積極的に導入するため、2006年、庁内にICT活用教育推進室を設け、コンピューターを使って教科指導ができる教員100%の目標を掲げた。その目標は07年3月に18小学校(当時)、08年2月には8中学校のすべてで達成した。 「教員に方針を示し、学校という組織を動かしていくのは管理職。まず校長と教務主任の研修から始め、ICTの重要性に気づくよう意識改革を行った」と五十嵐俊子室長は振り返る。 ネックは、長い教師生活で築き上げた授業方法に誇りを持つベテラン教諭だった。パソコンにほとんどふれたことがない者も多く、最初の一歩が踏み出せない。そんな場面で大きな役割を果たしたのが、メディアコーディネーターと呼ばれる4人の助っ人だった。教員免許を持ち、教員採用をめざしている若者で、推進室が小学校に1週間、中学校には3週間派遣。機器の設置などの作業を請け負い、ICTの良さを実感してもらうことに力を注いだ。 「黒板だけでも授業はできるが、映像作品や色鮮やかな画像を示すことで、勉強嫌いの子の興味も引ける」と教員生活27年目に入った平山小の石川育代教諭。古宮キヨ子校長は「目を輝かせて教材に見入る子供たちの姿を見ていると、自分はそこまでの授業をしていただろうかと悔しく思うこともある。ICTを取り入れることにより授業を見直し、ひと皮むけた先生も出てきた」と話す。 ◎
ただ、教科担任制の中学校へのICT導入は、一筋縄ではいかなかった。「10年、20年かけて表現力や話術に磨きをかけてきた先生たちの教える技術は、もはや職人芸だから」と、市立平山中学校の 教務主任として、校内でICT推進の旗振り役を務めているが、決してパソコンが得意なわけではなかった。しかし、理科教諭として頭を悩ませてきた力学的エネルギーの授業の導入にも使えると気づいた。車が壁にぶつかった時の壊れ方を速度で比較する衝突実験などの映像をパソコンに取り込んで使ったのだ。 「これまでの授業は壊さずに、話術などで補ってきた部分で使えばいい。ICTに振り回されては元も子もないから」と行冨教諭。今の子供たちにとって、ICTの活用は確かに有効だが、最も大切なのは個々の教員の授業力だ。(保井隆之、写真も) 校内LAN整備率62・5%…米韓に大きく後れ文部科学省が8月に発表した2007年度「学校における教育の情報化の実態等に関する調査(速報値)」によると、今年3月現在の普通教室の校内LAN整備率は62・5%。政府の「IT新改革戦略」(06年発表)で掲げた11年3月までの「おおむね100%達成」は厳しい。 米国94%(05年秋)、韓国100%(05年12月)などに比べて大きく後れを取っている。都道府県別では、東京の整備率は37・0%で46位だ。 教員のICT活用指導力については、05年度までの調査が「コンピューターで教科指導等できる教員数」を答えるだけの設問で、日野市の100%達成は、この調査を踏襲した数値。06年度からは、教材研究・指導の準備・評価などにICTを活用する能力、授業中にICTを活用して指導する能力など、質問が18項目に細分化された。ここでも、07年度の都道府県別順位で東京は23〜40位と低迷しているだけに、日野市の突出ぶりが際立っている。 (2008年9月17日 読売新聞)
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