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学校の情報化

(5)PC活用 ハンデを軽く

放課後、思い思いのペースでパソコンの操作を練習する日高養護学校の生徒たち

 ICT(情報通信技術)機器の活用で、障害児の世界が広がる。

 パソコンにつながれたボード型の機器。大きなひらがなが五十音順に並び、指で押すと画面に文字が入力される。

 埼玉県立日高養護学校の高等部の情報の授業。右半身にマヒがある女子生徒が左手で打っていたのは、インテリキーと呼ばれるキーボード。文字が書かれたシートを差し替えれば入力方法が変わり、自分が使いやすいキー配列を作ることも可能だ。

 「指先が震えて正確にキーを押せない脳性マヒの子らに有効。既存のままでは操作が難しくても、補助具と呼ばれる機器を介せば使いこなせるようになる」と教務主任の小林和夫教諭(56)。

 別の教室では、筋肉の動かせる範囲が徐々に狭くなる筋ジストロフィーの男子生徒が、ゆっくりだが正確なタッチでキーボードの入力練習に取り組んでいた。目標はワープロ検定合格だ。

 「鉛筆で字は書けなくても、パソコンを使えば自分を表現できる。情報機器を使うことで、障害児の可能性が広がっていく」と小林教諭は話す。

 肢体不自由の子供が学ぶ同校は、早くから授業にパソコンを取り入れてきた。しかし、パソコンを動かすオペレーションシステム(OS)に、障害者らでも使いやすいアクセシビリティーと呼ばれる補助機能が付いていることを知る教員は少なかった。そこで昨年まで2年間、アクセシビリティーを学ぶ研修に取り組んだ。

 「こうした機能に習熟していなければ、生徒の不利益につながると痛感した。研修を通して子供に何が必要かを常に考えるよう教員の意識が変わった」と市川孝教頭は振り返る。

 講師を務めた東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍(なかむらけんりゅう)教授(障害心理学)は「視力が悪い人が眼鏡をかけるように、障害児にとって情報機器は必須」と強調する。「パソコンなら100枚のリポートが書けるのに、汗水垂らして手書きで1枚の原稿を書かせようとする教員が、まだいる。障害児の教育の権利を保障するため、もはやICTは前提条件だ」

 ボタンを押すと「おはよう」などの声が出るトーキングエイド、マウスが操作できなくても棒を倒すことによりカーソルを動かせるジョイスティック……。教室に並ぶ補助具の多彩さに目を奪われる。

 「障害の状況・度合いにより、パソコンとのかかわり方も変わる。機能はその子に特化したものになっていき、子供の数だけ補助具が生まれる」と小林教諭。

 放課後のパソコン部の活動を見学した。ゲームを楽しんだり、ネットサーフィンをしたり、文字の入力練習に没頭するなど、みな思い思いにパソコンに向かっている。自ら出歩く機会が乏しく、卒業後は外界とのつながりが減ってしまう生徒にとって、パソコンは社会とつながる大切なツールだ。(保井隆之、写真も)

 アクセシビリティー 障害者や高齢者などハンデを持つ人にとって、その機器やサービスなどが利用できる可能性のこと。マイクロソフトのWindowsには、画面の一部を拡大して見る拡大鏡、画面のテキスト情報を読み上げるナレーター、キーボードを使わずにマウスやスイッチなどを操作して文字を入力するスクリーンキーボードなどの補助機能がある。

2008年9月23日  読売新聞)
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