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学校の情報化

(9)信州大学教授 東原義訓さんに聞く

ICTに偏見根強く

 学校のICT(情報通信技術)化の旗振り役は現状をどう見ているか。

 信州大学の東原義訓教授は30年前、コンピューターが教育の世界に入ってきた当初から可能性に注目し、様々な活用法を提案してきた。現在は大学の教育実践総合センター長として、教職を目指す学生や教員の研修で、コンピューターを利用した指導法のノウハウを教えつつ、東京都日野市など、情報化を進める自治体への助言役も務めている。

 CAI(Computer Assisted Instruction=コンピューターを活用した学習指導法)という言葉が、学校現場で盛んにもてはやされた時期もあった。しかし、コンピューターに偏見を持つ教育者の声は、当時から変わっていない。

 「ICTは単なる道具に過ぎないのに、使いこなす自信がない不安から、必要以上に敵視する。教育は人間がすべきで機械がやるべきでない。子供同士のつきあいが希薄になり、教師との人間関係も疎遠になるなどとして、コンピューターは役に立たないと極論に走ってしまう」

 こうした考え方は、ICTに不慣れな年配の教員だけでなく、携帯電話やパソコンなどの情報機器に囲まれて育った教員志望の学生の中にも、少なからずあると指摘する。「よほど悪い原体験を持っているのか、先入観に縛られている学生が驚くほど多い。ICTを使って生き生きと学ぶ子供の生の声を聞かせるなどして、意識を変えさせることが不可欠だ」

 食わず嫌いの教員には、まずコンピューターに触れるきっかけを作るのが重要だという。日野市のメディアコーディネーターのように、機器の設置からサポートしてくれる支援員を置くのが有効だと訴える。

 もちろん、ICTを導入するだけで学力が向上するという考え方は、早計に過ぎる。子供にとって意味がある使い方と、役に立たない利用法があるからだ。教師にとっても子供にとっても、教え学ぶための道具という視点を忘れてはいけないという。

 「指導力がある教員が上手に活用すれば鬼に金棒。子供が自分で問題を解決する上で、コンピューターは重要な武器になる」。ICTを活用した実践を多く見ることが、座学の研修より大事だと訴える。向上心を持つ教員なら、それまで気づいていなくても、授業の発想を主体的に変えるきっかけが得られる場合が多いからだ。

 ネックはICT格差。自治体の財政力の差が開けば、ICT化への取り組みの地域差がますます大きくなると心配している。

 文部科学省の「学校のICT化のサポート体制の在り方に関する検討会」は7月、統括的な責任を持つCIO(Chief Information Officer)を教育委員会に置くことを提起している。ただ、人材を割けない地方の自治体も多い。そうした自治体は、教育事務所単位で周囲の自治体や校長会と連携しながら取り組む発想が必要だと強調する。

 「予算措置はもちろん、ICT化の視点を学習指導要領でもしっかり位置付けてほしい」。ICT教育の最前線を走ってきた経験をふまえた上での切実な注文だ。(聞き手・保井隆之)

 ひがしばら・よしのり 筑波大助手から信州大に転じた。専門は教育工学と教師教育。日本科学教育学会と日本教育工学会の理事。54歳。

2008年9月27日  読売新聞)
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