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(1)読解力の育成へ 討論や発表重視読解力育成を全校共通の目標にした学校に、変化が生まれた。 6年生に最初に見せたのは昔の東京を描いた2枚の絵だ。松山市の住宅地にある市立北久米小学校の森田幸恵教諭(52)による社会科の授業は2日、「明治維新」を迎えた。 「どこが違うかな?」 「和服が洋服になっている」 「刀を持った人がいない」 「馬車や乗り物がある」 やがて、描かれた年が記されていることに気づいた子が「20年しか差がない」。他の子からも驚きの声が上がる。 「明治維新について知りたいことをまとめよう」という指示で、4〜5人の班ごとに「服装が変わったのはなぜか」「なぜ急な変化が起きたのか」などとテーマを決めた。 翌3日。子供たちは教科書や資料集から、「西南戦争」「大久保利通」「廃藩置県」といった、テーマと関係しそうな言葉を拾い出し、付せんに書いて模造紙に張っていく。さらに、歴史上の事件や人物、政策など、拾い出した言葉の共通点を見つけて付せんを並べ替え、さらに関連性を探していく。 森田教諭は「ここの班は、明治で世の中が変わった理由を文章でまとめているよ」と、好例を引き合いに出して、討論や作業を活性化させた。 ◎
北久米小は2005年から3年間、国の学力向上拠点形成事業の指定を受け、中学校と連携した系統的な読解力の向上指導に取り組んだ。経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)で、日本の子供の読解力低下が指摘された翌年からだ。授業改革の中心になった森田教諭らは、子供自身が学習課題を見つけて解決をめざす授業作り、グループによる話し合いや、書くこと、発表することを重視した授業作りを、学校全体の目標にした。 班に分けても、一部の子供だけが発言するなど、狙い通りにいかない面もあった。考える習慣をつけるには、性急に教師の解答を求めがちな子供に教えすぎないこともポイントだが、加減が難しい。 森田教諭は「授業で意見が出ない時や、学習の狙いと違う方向に話が進みそうになった時、子供に『なぜそう思うの』『こういう考えはどう』などと上手に質問し、修正する技術が必要。教科の専門知識を基にした教師の指導力が問われる」と説明する。 ◎
3年の担任、三好京子教諭(46)は、算数で割り算の余りに関する問題を出した。「31人の子供が4人1組でゲームをします。みんながゲームをするには何組が必要?」 子供たちは班ごとに話し合い、ホワイトボードに書いて発表する。「8組だと思います」という発表に、三好教諭は「理由は?」「疑問に思う人はいない?」と質問を重ねていく。「7組だと思っている子もいるよ。君だったら、どうやって説明する?」。困っている子供には「図を書いた子もいるよ」と助言する。 子供は「4人1組」と「みんながゲームをする」という二つのルールの間で揺れ動く。「7組で3人が遊べなくなるのは、かわいそう」という意見から「8組作って1度遊んだ人を入れればいい」という結論に至るまでに、算数の「余り」や「切り上げ」にも様々な意味があることを学んでいく。「こうした問題を出すと、子供は運動会の時に自分はどうしたかなど、日常生活を手がかりに解答しようと頭を働かせる」と三好教諭。 取り組みを始めて4年目。「授業がわかる」「土日に読書をする」という子の割合が5〜10%上がるなど、成果は少しずつ上がっている。 それ以上に、教師の学力観が大きく変わった。知識があっても頭の中で結びつけられない子、情報の引き出し方はうまいが知識が少ない子、発表や作文が苦手な子など、「できない子」にも様々なタイプがあるということが、教師たちの共通認識になった。 一見、遠回りな学習法は「結果的に、子供の個性に合った効率的な指導に役立つ」(森田教諭)という効果をもたらしている。(宮崎敦、写真も) PISAショックで危機感OECDによるPISAは15歳が対象で、2000年から3年ごとに実施され、前々回は04年12月に公表された。前回、読解力が8位だった日本は14位に下がり、PISAショックとも呼ばれた。06年の調査も15位にとどまっている。 この調査が求めるのは、文章や表、グラフなど複数のテキストを組み合わせ、分析して解答を導いたり、自分の行動を決めたり、意見を表明したりすることも含めた総合的な読解力。知識や情報を基に「自分の頭で考える力」が欠かせない。 PISAの結果に危機感を強めた文部科学省は、05年、読解力向上プログラムを策定し、全学年・全教科で読解力をはぐくむ授業作りを提案。小中学校の新しい学習指導要領でも、読解力に深くかかわる言語能力を、国語だけでなく各教科で育成するよう求めている。 同省の田中孝一・主任視学官は「個々の教師の努力だけではなく、学校全体で教育力を発揮し、評価される時代。教師は、国語の授業で理科や社会の話題を出すなど、他教科との関連に目を配ることも必要だ」としている。 (2008年10月21日 読売新聞)
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