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「体育」を見直す

(1)外遊び経験不足…「多様な動き」学ぶ

筒を引っ張りあう宮前小の1年生。「多様な動きをつくる運動遊び」の一つだ=中村光一撮影

 遊びの中で培われてきた運動を、体育で取り入れる動きがある。

 1年生の児童30人が体育館でケンケンを始めた。川崎市立宮前小学校で11日に行われた体育の授業。担任の佐藤映子教諭(32)のタンバリンに合わせ、体育館を端から端まで移動する。途中、両足で跳んでしまう子もいて、佐藤教諭からストップがかかった。

 ケンケンの後は、「うさぎ」「くま」「あざらし」と次々に指示が出る。ウサギ跳びをしたり、四つんばいで歩いたり、腹ばいになって腕の力だけで前進したり、子供たちは大忙しだ。

 後半は、体育館内の五つのコーナーを巡った。マット上でロープや筒を引っ張り合ったり、フラフープを回したり、缶で作ったぽっくりで跳び箱の踏み切り板の坂を歩いたり。子供たちの歓声が体育館に響き続けた。

 こうした授業を、「多様な動きをつくる運動遊び」と呼ぶ。今年3月告示の新学習指導要領で小学1、2年の内容として新たに示された。バランス遊び、体を移動する遊び、用具を操作する遊び、力試しの遊びの4種類。「今までの子供が遊びや生活の中で身につけてきた動きを経験させる」(文部科学省企画・体育課の白旗和也教科調査官)のが狙いだ。同小では秋から試行している。

 同小の児童も外遊びの経験は乏しい。佐藤教諭が先月、クラスの子供たちに、帰宅後の遊びを聞いてみた。結果は半数近くがゲーム。外で遊ぶ子は2割足らずだった。

 佐藤教諭は「ゲームの要素も取り入れ、楽しめるようにして、帰宅してからもできる内容にしたい」と「運動遊び」の広がりを期待する。

 千葉市立北貝塚小学校では5日、6年生33人が一風変わった跳び箱に取り組んでいた。跳び箱に向かって助走しながら、自分で宙に放り投げたバスケットボールをつかむ。跳び箱に跳び乗り、下りる時には再び上にボールを投げ、ジャンプしてボールを高い位置でつかむ。この時、体は90度ひねる。

 「ボールをキャッチすることで、ボールとの距離感をつかむことができる。体をひねるのは、これまでの動きと違う動きをスムーズに続ける能力を養うため」と担任の佐藤一教諭(46)。それぞれの能力が、踏み切り板に向かう際の距離感の把握や、助走から踏み切りへの切り替えなど、跳び箱そのものをする際に役立つという。

 こうした動きは、コーディネーション運動と呼ばれる。身のこなしをよくしたり、運動神経を高めたりする効果があり、「運動遊び」にも通じる。旧東ドイツで開発されたのは約40年前だが、東京都足立区が昨年度から教員研修で取り入れるなど、近年、日本の学校に広がろうとしている。

 「何もないところで、子供同士がぶつかったり、子供がドアや机にぶつかったりする。距離感をつかめなくなっている」と佐藤一教諭。先日も、休み時間に教室から廊下に出ようとして、友人の机に脚を引っかけて転んだ6年生の男児がいた。「今まで普通の生活をする中で培われた運動能力だが、今はそういう生活ではなくなってきている。意図的な運動をすることで、能力を引き出していきたい」

 日常生活で多様な動きが経験できない現代社会が、学校の「体育」を変えようとしている。(山田睦子)

 多様な動きをつくる運動遊び 新学習指導要領では小学校低学年で実施される。体を動かす楽しさや心地よさを味わう内容だと強調するため、「遊び」の名前がついている。中学年では「多様な動きをつくる運動」になる。高学年は「体力を高める運動」で、その前段と位置づけ、体の基本的な動きを身につけさせるのが目的。

◇ ◇

「楽しさ」「喜び」体感 重視

 ◆「体育」週3コマに

 今年3月に告示された小中学校の新学習指導要領では、芸術、技術系教科の時間が変わらない中、前回(1998年)の改定で週2・6コマまで減っていた体育の授業時間数を、小学5、6年を除いて週3コマに増やした。正式な実施は小学校が2011年度、中学校が12年度だが、小学1、2年は来年度から時間数が増える。

 背景にあるのは、子供の体力低下への懸念だ。文部科学省が06年度に改定したスポーツ振興基本計画でも、低下傾向に歯止めをかけ、上昇傾向に転ずることを目標としてうたった。

 この基本計画などを受け、文科省では今年、市町村ごとや学校ごとの体力の現状を把握し、改善に役立ててもらう全国体力テストを初めて実施。小学5年と中学2年の全児童生徒が対象で、約7割の学校が参加した。結果は12月に公表される。

 また、新指導要領で強調されているのが、生涯スポーツの重要性だ。これまでも小中学校では運動に親しむ基礎を育むよううたってきたが、今回の改定で、将来学校を卒業した後もスポーツに親しむ素養を培うことを強調した。このため、体育の授業では、運動の楽しさや喜びを経験させることを重視する。

2008年11月18日  読売新聞)
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