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    AIは社会を救うか

    • 昨年の東京モーターショーで展示されたコンセプトカー。将来のAIによる自動運転を想定し、運転席にハンドルがない(10月31日撮影)
      昨年の東京モーターショーで展示されたコンセプトカー。将来のAIによる自動運転を想定し、運転席にハンドルがない(10月31日撮影)

     読売新聞朝刊教育面の第2、第5水曜日で新コーナー「ニュースde道徳」を掲載しています。13日朝刊では、人工知能(AI)の進化と人の将来、AIとの関わり方についてのニュースを取りあげています。「真理の探究」がテーマです。

     このテーマをめぐっては、以下のようなニュースもありました。

    世界のクイズ王たちを圧倒

     アメリカで昨年12月に開かれたAIの国際会議で、AIと人間代表が競う、風変わりな早押しクイズ大会が行われました。

     知識だけのクイズならAI有利に思えますが、早押しクイズは知識だけでは勝てません。問題文の言葉や文法を正確に理解し、問題文の途中でもいち早く答えを予測する必要があります。

     大会には約50チームのAIが参戦し、まずはAI同士で戦い、日本から参加したAIが優勝し、人間への挑戦権を得ました。インターネット上の百科事典ウィキペディアにある約60ギガ・バイト分の知識や米国の有名なクイズ番組の過去問10万題などを学習し、問題文から答えの種類を「人名」「地名」などと推測する能力も磨いて、答えを導き出すAIです。

     人間代表は6人の合同チーム。米国で人気の早押しクイズ番組で25万ドル(約2500万円)を稼いだ強豪や、複数の大会で優勝経験のある数学者らです。しかしAIは、早い時には読み上げ開始から約5秒で解答するなど、人間を圧倒。56問中37問で正解して465点を稼ぎ、人間の合計点200点を大きく上回りました。このAIを開発した会社では「技術は、顧客の相談に早く的確に答えるコールセンターなどに活用できる」と話していました。

    地方のドライバー不足解消めざして

     鳥取県八頭町(やずちょう)は自動運転関連サービスの開発会社と自動運転バスの事業化に向けて協定を結んでいます。会社の担当者は、「2021年度以降に自動運転バスのシステムを提供したい」と話しています。

     八頭町では、若者が職を求めて地元を離れ、人口が毎年300人弱のペースで減少。現在は約1万7000人で、高齢化も進んでいます。鉄道駅と集落を結ぶ民間の路線バスが撤退し、町が引き継ぎましたが、運転手の確保が難しくなってきています。町は「計画が実現すれば町民の移動手段が改善するだろう」と期待しています。

     会社は、車体に搭載したAIが、レーザーセンサーやカメラからの映像と、全地球測位システム(GPS)の位置情報を基に、アクセルとハンドルを操るシステムを開発しています。歩いている人間や、道路わきの電柱、ガードレールなど、刻々と変わる道路周辺の状況を人間のように識別できるそうです。

     政府も、民間企業が進める自動運転技術の開発を強く後押ししています。経済産業省は自動運転車の実験を通じ、安全を確かめるデータを集めて実用化の手助けをする考えです。同省の担当者は「高齢化が進む地方は、公共交通のニーズが高い。定まったルートを低速で走る公共交通ならば自動運転の技術的ハードルは低い」としています。

    法廷でどうなる? 自動運転の事故責任

     車自体がハンドルやブレーキなどの操作を行う自動運転車の技術開発が進んでいます。しかし、事故を起こした際の責任の所在など現行法での対応には限界も指摘されています。AIが運転する「完全自動運転車」が事故を起こした場合、責任は誰が負うのでしょうか。

     明治大法科大学院の中山幸二教授(民事訴訟法)は、国の委託を受け、完全自動運転車の事故に関する「模擬裁判」を開きました。

     道路交通法は、AIの運転は想定していません。模擬裁判では、自転車が前方に飛び出してきたため、完全自動運転車が急に車線変更し、これを避けようとした後続車が左側の電柱に衝突して運転手が死亡したという事故を想定しました。

     裁判官役を務めた学者らは議論の末、現状のルールや開発レベルでは車に欠陥がなかったとは言いきれず、判決よりも「和解勧告」を選択しました。中山教授は「模擬裁判をすることで具体的な課題が明らかになる」と話します。

     法政大法科大学院の今井猛嘉(たけよし)教授(刑法)は「完全自動運転車の責任について、現行法での対応が難しいところもある。AIの責任の位置付けを含め、新たな法整備が不可欠だ」と指摘しています。

    2018年06月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun